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さすが日経だと思った日経トレンディ もちろん悪い意味で

弟Bにモバイル通信を紹介すべく情報を集めています。ネットで集めるのもいいですが、説得力のある説明をするには印刷物に書かれている文を読みながらのほうが良いので、雑誌を探しにいきました。ネット情報は自分の頭の中に入れておけばいいでしょう。
見つけたのは「日経トレンディ」・・・。失礼ながら、まだあったのか、この雑誌。トレンディって言葉の響きがその意味とは逆にもはやレトロな雰囲気すら漂わせるんですが。それでも、スマートフォンだけの情報に偏りがちな他誌の記事と違い、スマートフォンで使うのを前提とはしているものの、モバイル通信の比較記事は結構充実しているものでした。忘れられやすい日本通信まで一覧表に載せているのは、ここならではというところですか。もっとも、日本通信のサービスを使うのなら組み合わせは解約済みのスマートフォンがベストなので今回の対象外ですが。

ただ、雑誌部門と言えどもやっぱり日経グループなんですよねぇ。日経と言えば、かつてWEB上の記事でFriioを取り上げた際に「違法」「荒稼ぎ」「悪貨」と汚らしい言葉を使ってののしり、録画規制を「紳士協定」、規制対応チューナーを「合法チューナー」と呼ぶなどでっち上げまで含んで業界談合ヨイショを行ったことが忘れられないグループ。その実績を忘れないため、わたしは規制対応チューナーを今でも「所謂合法チューナー」と呼んでいます。ちなみにその記事では「合法チューナーの胎動によって不正品を駆逐しなければならない」と勇ましい掛け声を高らかにうたっていましたが、「不正品」と罵られた自由チューナーは種類を増やしPC録画ユーザーの間で完全に定番品となり、所謂合法チューナーは忘れられています。
それだけに、「悪いことは書いていないかも知れない」と思って読んでいたら、案の定そういう部分がチラホラ見かけられました。
わたしが気になったのは、48ページの「固定回線を"捨てる"選択肢も有効」という記事。モバイル通信を固定回線の代用品として使うのもあり、という内容なんですが。基本的にモバイル通信は一定量以上のデータをダウンロードすると速度が128Kbps程度まで低下させられてしまう制裁が加えられます。ゆえに代用品になりうるのは制限のないWiMAXだけ、という内容なのですが、他のサービスの制限の内容も一緒に書いてあるのです。そこにauが書いてないのはWiMAXも使えるから実質制限ない(auの3Gだけ使っていると制限あり)のでよしとしましょう。問題はソフトバンクモバイルのULTRA SPEED。「ソフトバンク回線は前々月の月間通信量が約3.66GBを超えると速度制限の可能性。」と書いてあり、その後は利用可能なイーモバイル回線の条件をほとんどそのまま書いてあるのです。確かにソフトバンクモバイルは「速度制限の可能性」までしか公言していないようですが、ここの問題点はそこではなく、速度制限が最高一ヶ月も続くことにあります。が、そのことには一言触れていません。書くスペースがなかった、というのならイーモバイルの説明をせずに「イーモバイル回線利用時に関しては同サービス準拠」と省略し、本文に「最大一ヶ月間」を加えればいいだけではないですか。だからこそソフトバンクモバイルは制限に関してはあまり公開したがらないのですが(ウィルコムの借り入れモバイル通信はもっとひどいですが)、情報誌がそれに配慮する必要はないでしょう。ソhトバンクにとって都合が悪いのでわざと書かなかったようにしか見えません。

ここだけなら単なるミス、もしくはソフトバンクモバイル側が公言していないので書くことが出来なかっただけ、とも言えます。ですが、他の部分でも同様の都合の悪いことは書かないという配慮が見えるのです。
それは61ページから3ページにわたって書かれる「曲がり角?デジタル時代の著作権」という記事。ちなみにこれが載っていたから買った、というわけではなく全くの偶然です。本来はあまり読む人がいないだろう穴埋め記事のようですが、あえて興味深く読ませていただきましょう。すると、案の定「肝心なことは書かない」という意図が強く出ている内容になっていました。
まずは例の録画保証金訴訟。日本以外の各国の補償金の取り扱いを、録画だけでなく録音の補償金や日本では対象外になっているメモリオーディオプレイヤーまで比較対象にして、あたかも「録画補償金を求めるのは諸外国でも当たり前のことで、払わないのはおかしい。日本の補償金制度が特別重いわけではない」と取れるように書いていますが、日本だけ採用されている録画規制に関しては一言も触れられていません。しかも、この裁判では「諸外国に例を見ない録画規制のある日本のデジタル放送で媒体(メディア)には補償金が課せられているにもかかわらず、機器に対しても補償金が必要なのか」ということは争点となったはず。これはあきらかに意図的な無視です。引用元はSARVH(録画補償金を徴収している団体)の用意した資料なのでそうなっているのは当然と言えば当然なのですが、そのまま載せるのは手抜きを通り越して提灯持ちと言われても仕方ないでしょう。
また、そっちでは他国の例を持ち出しているにもかかわらず、「日本版フェアユース」に関しては諸外国の例を持ち出さず、日本で文化庁が法案として定義したものだけを掲載しています。「米国でフェアユースは法制化されている」と書くのなら、その中身も書けばいいじゃないですか。「米国版と比べると内容は限定的だが」と書かれても米国の中身がわからなければ知らない人は評価のしようがないでしょう。ついでに言えば、この記事で著作権問題として書かれている「自炊代行業者」「録画補償金訴訟」「ウィニー裁判」「著作権間接侵害(まねきTVやロクラク裁判のこと)」の、いずれの解釈にも日本版フェアユースでは触れられていません。日本版フェアユースは業界内でのお約束事を法律化しようとしているだけのものであって、個人利用にフェアユースは適用されないことを定義するための法律にしか見えないシロモノですから。

この記事の中で唯一注目すべき点があるとしたら、その日本版フェアユースを含む著作権保護法改定案を文化庁は今国会に提出、とある部分です。現在公開されている衆議院の議案にはそれっぽいものは見受けられませんが、これから出すということなのでしょうか。例の文化庁法案は、以前見たときは実質的にB-CASを法律で保護する内容がさりげなく盛り込まれていたため、警戒しているので知らないうちに成立、とかなって欲しくないのですが。日本版フェアユースを隠れ蓑に規制強化・特定企業の法律保護なんてゴメンですからね。チェックし続ける必要はありそうです。

いやー、わかる人にはわかる情報を隠すことで逆に危機感を与えてくれるとは、さすが日経のやること、感心するしかないですね。

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