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Channel: 録画人間の末路 -
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ああ、巨大ロボット映画

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騒がれた割に興行収入はイマイチであったという噂もある、巨大ロボット"イェーガー"と巨大"KAIJUU"が戦う映画、パシフィック・リムのBD&DVDが発売になったので、紳士のたしなみとして購入した。

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うん、やはりこの映画に登場するKAIJUUは怪獣と言ってもアメリカンクリーチャーの巨大化版であり、日本怪獣を踏襲した存在ではない。作り手は生物感を重視したそうだが、日本の怪獣の特徴は引いて映すことを前提として美しく、あるいはある種のかわいさが見える作りにある。どんな怖い動物にしたところでおとなしくしていれば結構愛嬌があって見えるのと同じ事。一方パシフィック・リムの怪獣は基本醜悪であることを前提にデザインされているとしか思えない。特に最大の見せ場となっている香港対決に登場するKAIJUUは二匹いるがどちらも四足歩行型のうえ手足が長い。これはは虫類と昆虫の両方を連想させ、かつアンバランスなので嫌悪感さえ感じる。日本の怪獣は大半が二足歩行かつほぼ全てが短足なので(言うまでもないが人が入るぬいぐるみである以上避けられない問題ではある)どこか可愛げがあるのとは根本的に異なる発想で造られているのだ。ただ、前半にわずかなシーンだけ登場するKAIJUUはやはり少々足が長いのもいるが短足二足歩行というフォーマットを守ったものもいるところを見ると、KAIJUUを怪獣に近づけるつもりはあったと思われる。公開当時「もう日本の怪獣映画はダメだ」などの揶揄の声が飛び交ったが、その発言をした人たちは日本製怪獣映画をあまり見たことがない人たちだと思われる。少なくともわたしは改めて日本怪獣の良さを再認識できたと思った。
※それが悪いと言っているのではないことは強調しておく。アメリカ製怪獣映画の良さもわたしは良く知っているつもりだし、その過去の例から見ればあり得ない強さを前面に押し出した構成は映画史に残る存在と思う。

一方巨大ロボット映画として見ればこれはかなり良くできている。特に素晴らしかったのは主役ロボのジプシー・デンジャー。序盤の発進シーン直前からのワクワク感が動き出して出動してからもつながり続けるなんて実写映画では初めて見た。日本の特撮ではどうしても基地からの発進から動くまでの間が一瞬切れてしまうからだ。この高揚感はアニメでも少ない。古いがせいぜいマジンガーZが持つくらいだと思う。その直後に始まるナイフヘッドとのバトルはどこかぎこちなさと不自然さを残すイェーガーの動きとあくまで生物の延長であるグリグリとしたKAIJUUの動きの違いも見事表現されていて、若干イェーガーの質感が出きっていないところを除けば文句なしである。ただ、香港に来るとその表現差がすっかりなくなって同じようにグリグリ動くだけになってしまうのがあまりに残念。CG感を誤魔化すためとしか思えない降り続ける雨のうっとうしさといい、本気で前半と後半はVFX担当者が別人になってしまっているのではないかと思う。

「初めて見た」などと発言はしたものの、実は巨大ロボット映画というものは過去あまり無い。ロボットアニメや戦隊ものに登場するロボットが毎週どこかで放送されているの我が国日本ですら、巨大ロボットを前面に押し出した映画、というものはいくつもないのである。「地球防衛軍」のように侵略者の尖兵としてちょっと登場するものや「ゴジラ対メカゴジラ」のように怪獣の相手役・敵役として登場するものはあるが、ロボット側があきらかな主役となるとこれが無いのである。映画だとせいぜい「ガンヘッド」、「鉄人28号」(2005年公開版)くらいしか思いつかない。ただ、前者は要塞跡内だけで展開する話で巨大ロボットものとしての高揚感に欠け、後者はあまりパワーのないフルCGで特撮感がない。「機動警察パトレイバー」実写版の噂が出ては消えているが、実現すれば初の日本製本格巨大ロボット映画と呼んで良いだろうと思うくらい実写巨大ロボット映画というのはありそうでないポッカリ空いた空間なのである。
一方洋画は、と言われるとこれはいくつかある。一口に洋画と言っても国はたくさんあるので日本一国の数とくらべるのは酷かも知れないが、怪獣映画となると他国全部足しても質量ともに日本一国に全く及ばない状況から見るといろいろ面白い。ちなみに「アニメ」を含めると怪獣以上に日本製巨大ロボットが世界でぶっちぎりの存在になるのは言うまでもない。
この機会に見直したりDVD買ったやつをちょっと紹介。


・ロボ・ジョックス
「巨大ロボットが登場する映画」と言われて思いつきそうな典型を全部つぎ込んだような映画。東西両陣営に分かれた世界を舞台に、その紛争を解決する手段として通常戦闘を放棄し、ある程度のルールにしたがって人型ロボット同士が戦うことで戦争の代用とするという内容となっている。この世界観と良い、操縦方法が人が動く動きと同調してロボットが動く人機一体型を採用しているところといい、日本のロボットアニメ「機動武闘伝Gガンダム」の元ネタの一つであるところは間違いない。特撮はデヴィッド・アレンと言うことでてっきりロボットがストップモーション・アニメでグリグリ動くのかと思いきや、モデルアニメ箇所はわずかで大半はミニチュアを使い、カットを細かく切って表現している。ゆえにあまり動いている印象もなければ重量感も全然出ていない。製作がアルバート・バンドなだけに特撮に予算を回さなかったのが原因なんだろうけど、動かない発進前が異常にワクワクさせるものがあるだけにそのギャップに脱力してしまう。
クライマックス、宇宙戦(なんで?と思うくらい唐突)で片足を損傷した主役ロボは変形して足に装備された無限軌道(所謂キャタピラ)走行モードになるんだけど、これが前述した「ガンヘッド」のスタンディングモードにやたら似ている。両映画は奇しくも同じ年の公開となった。日本のロボットアニメのような映画を作りたいとして撮影された「ロボジョックス」の主役ロボの人型から離れたモードと、明らかにアメリカンナイズされたセンスで造られた「ガンヘッド」の人型に近づいたモードが似ているというのは皮肉。なお、「ロボ・ジョックス」の主役ロボは日本製もしくは日系人設計という設定なのか、名はマツモト14号という・・・。なんでこういうセンスだけ日本のマネをしなかったかなぁぁぁぁぁ。「ロボジョックス」のDVDも10年前のものしか出ていない。「パシフィック・リム」の元ネタと思われる部分も少なくないだけに出すなら今年のうちだった!! もう遅いけど。


・バトル・オブ・アトランティス
本来のタイトルは「アトランティス・リム」。はい、もちろん便乗製作の暗黒面マニア向け低予算B級映画です(笑)。あまりに露骨なタイトルなせいか日本で発売されたDVDではタイトルが変更になりました。
内容は深海から出現した巨大怪獣(クリーチャー)に対抗するため、人型巨大ロボット(モビルスーツ)を戦わせるというなんのヒネリもないもの。ロボットも怪獣も低予算ものらしくフルCGだがCG感むき出しのペラペラのもので、期待するのはヤボ。軍隊の戦闘も実際の軍の映像を使い回してそれっぽくしているだけで、怪獣に直接戦いを挑むのはマシンガン構えた歩兵が数人だけなど基本的にはしょぼいし、ロボットの見た目はもうちょっとなんとかならなかったのかと脱力するほど不細工。それでも本作の怪獣はむしろ怪獣っぽく造られているし、最後の超巨大怪獣と戦うべくロボットには飛行能力が追加され、飛びっぱなしの状態で戦闘をしかけるなど往年のロボットアニメ「グレンダイザー ゲッターロボG グレートマジンガー 決戦!大海獣」を彷彿させなくもないシーンもあったりして開き直って見れば楽しめる。不満点は少なくないけど、それもこれも日本語吹き替え音声にしか収録されていない、轟き叫ぶ必殺技の名前の高揚感で全部チャラ! これは声優さんのアドリブか? と思うけどこんなところで本家対抗の意地が見られて満足。

バトル・オブ・アトランティス [DVD]グレアム・グリーンアルバトロス


・機械人間 感覚の喪失
旧ソ連映画。巨大ロボットと言っても3〜4mがせいぜいなのだけど、1935年という年代を考えたらむしろ驚異。巨大=数十mという概念を定着させたゴジラがすごすぎるだけなのだ。
大不況の中低賃金で酷使され、使い捨てられ、それでも仕事に群がり続ける労働者。その状態から解放するため、"ルール"と呼ばれる人型機械(ロボット)の開発が行われるが、結果資本家が労働者の不満分子を制圧するための兵器として利用されてしまう・・・という内容。現代人の感覚から見れば民衆が抑圧・支配されている世界観といえば共産主義だが、この時代の共産圏では逆に資本主義が抑圧・支配の世界で、共産主義は労働者が解放された世界であるという概念が信じられていたのか、そういう前提でしか娯楽作品を造ることが許されなかったのかは分らないものの、当時の共産圏の思想に少しでも触れられるのは興味深い。本作のロボット"ルール"の名は機体にも書かれている"RUR"の字が当てられているようだがこれは元祖ロボット「ロッスムのユニバーサル・ロボット」の頭文字、R.U.Rから取られているのではないかと考えている。ロボットとは本来造られた労働者を指すのだ。
圧巻はなんと言ってもクライマックスのルールが民衆を攻撃するシーン。ルールは量産されているため、人間よりもずっと大きなロボットの大群が人々を襲うシーンは共産主義圏ならではの人海戦術もあって迫力に満ちている。攻撃手段はなぜか棒を持って家をたたき壊すなど妙に原始的ではあるが、アニメ・特撮を問わず日本のヒーローものではよくあるシーンだけに数十年も先駆けていた先見の明がすさまじい。それだけにラストの大逆転のしかけが明確に説明されていないのが残念で仕方がない。

機械人間 感覚の喪失 [DVD]セルゲン・ベチェスロフ,ヴァディム・ガーデイン,M・ボロジーナWHDジャパン

来年公開予定、新作ハリウッド「ゴジラ」のポスターやトレイラーも公開になり(もう雨中バトルは勘弁してね)、今度こそ怪獣映画しているのかと言う期待と不安が高まってます。日本の期待は「進撃の巨人」と言いたいところですが、これもファンタジーだし。そろそろ日本映画界も重い腰を上げて欲しいところです。

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