この数日もまだまだ暑い日が続いていますが、幸いにも体の水分が汗でみんな出て行ってしまうのではないか、と思えるほどの猛暑は少し鳴りを潜めたように思います。もちろん東京の話ですが、比較的すごしやすく、外出しやすい天候のおかげで8月序盤に東京に来たことを後悔せずに済みそうです。
そう、外出です! ようやく行ってきました東京都現代美術館開催イベント、「特撮博物館」です。月曜日は休館(来週の13日はやってるそうです)、火曜日は別件で忙しく、明日木曜日は帰郷するのでその前に部屋の掃除をしなければなりません。土日の人ごみを避けるためには、今日しか行ける日がなかったのです。
降り立ちますは東京メトロ半蔵門線清澄白河駅。ちょっと肌がチリチリくるような暑さの中を歩きます。電信柱には現代美術館を示す案内標識の役割を果たす広告が貼ってあり、それを目印に行けば、少々距離(公式には徒歩9分)があっても迷う心配はありません。東京都内というよりも少し地方都市の中心から外れた商店街のような雰囲気を漂わせる街を抜けると、いかにも東京の美術館、といわんばかりの巨大な建物が聳え立ちます。こんな街と並存していたり一等地にあったりするのが東京の大型美術館・博物館ですが、地方では小規模なものはともかく大規模なものはまずありえません。大型の美術館や博物館は地方でも決して珍しくありませんが、それらは過疎地や開発地など余った土地にあるものです。この間イベント目当てに行った某大型美術館なんぞ、裏から弥生時代の遺跡が出てくるような人里離れた山奥でした、誇張表現でなく。
そんな建物に「なんで最近の美術館の出入り口やロビーってどこも構造が似てるんだろう」と思いつつチケットを買います。ネットで事前購入もできますが、その場で買ってもなんの問題もないほどチケット売り場はすいています。さぁ、MAPをもらって入場です。
・・・なんだこの混み方は・・・。
ロビーはほとんど人がいなかったのに、中は平日が信じられないほど人がいます。部屋の一つ一つは大して広くないので特にそう見えるんでしょうが、最初の部屋だけで20人以上はいたでしょうか。もちろん休日ならこの二倍、いや三倍くらいいてもおかしくありません。これでもゆったり見られるほうなんでしょう。
しかし、みんな最初の部屋から先へ行きたがらないのも無理はありません。最初の部屋、「人造」のミニチュアからすごいです。「モスラ」の撮影に使ったものを再現した東京タワーがやや浮いていますが、それ以外はおなじみ超兵器の数々が心を奪います。「海底軍艦」と「惑星大戦争」のダブル轟天の雄姿。パラボラ兵器の代表格、メーサー殺獣光線車(サンガイのものではなく、ゴジラXメカゴジラで使ったものでしたが)と、バリエーションともいうべきハイパワーレザービーム車。ある意味特撮ヲタ定番の作品よりそうでない作品のミニチュアの方が貴重です。そしてなんと言ってもメカゴジラ第二号・・・。腰が抜けそうになるほど痺れました、こいつにあえたあまりの感激ぶりに。解説を読む限り、庵野氏は「ゴジラ対メカゴジラ」の初代メカゴジラの代用品として「メカゴジラの逆襲」の第二号を展示したようです。ただ、この第二号は初代のスーツを改造したものでしょう。劇中の設定でも破壊されたメカゴジラのパーツを集めて改修したものが第二号とされており、おそらく間違いないと思います。つまり、このメカゴジラは第二号にして初代でもあるのです(そう思って観察すると改造の跡が残っているような)。よく見ると手が新造であるなど完全な状態ではありませんが、40年も前に作られたスーツが、こういう展示会以外に使い道がないにもかかわらず残されていた、という事実に心が震えます。「マイティジャック」のマイティジャック号、「怪獣総進撃」のムーンライトSY-3・・・。気をつけないとこの部屋だけで体力を使いきってしまいそうなほど初っ端から密度が濃厚です。
「超人」の部屋では「怪傑ライオン丸」のライオン丸マスクの異質さに脅かされつつも、全身スーツが残っているはずのグリーンマンがマスクしかなかったことに少々ガッカリ感を覚えたり。スペースの都合でカットした展示物も当然あるのでしょうけど。ニヤリとさせられたのがデザイナー成田亨氏の画。ウルトラマンをデザインした成田氏はカラータイマーを付けることに反対だったため、後年書いた版でもウルトラマンには絶対カラータイマーがついていないことで知られていますが、ザラブ星人が化けた「ニセウルトラマン」の画にはちゃっかりカラータイマーがついているのです。カラータイマーは偽者にこそふさわしいと思っていたのでしょうか。なぜかこのコーナーに展示されていた「スターウルフ」のバッカスIII世の存在感が、ヒーローを差し置いて圧倒的でした。
「力」の部屋は「ガメラ」や「日本沈没」と言った樋口氏が手がけた作品を中心とした最近のミニチュア中心。細やかなつくりに感心しつつも「どこかで見た」感はガメラとそのセット以外はあまりなし。いよいよ舞台は地下へ。特撮ヲタなら一度は入ってみたい、特撮倉庫を再現した舞台です。一見したところ見過ごされそうな細かいところ(天井の飛行機とか、出口付近のゴム長とか)まで、ところせましと特撮に使われたであろうアイテムが満載。まるで巨大なおもちゃ箱です、最初にもらったMAPの裏側がガイドとして役に立ちました。その中でも、やはりど真ん中に置かれたゴジラの足が目を引きます。「怪獣大戦争」で作られ、「ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃」でも改造されて使われたけど、どっちも効果としてはイマイチ感があった巨大足ですが、こうして倉庫に置かれているには最高の一品です、シビれます!出口のキングギドラはちょっと浮いてますが、怪獣スーツを各所に配置するにはやむなしかも。その先にはゴジラ(VSデストロイアのスーツを改修したものかと)のスーツもありましたが、メカゴジラ・ガメラ・モスラ・キングギドラと全身スーツを眺めて怪獣になれた目にもなおケタ違いの存在感を見せるのは、さすがとしかいいようがありません。
こうした展示コーナーをうろうろしつつ、順路はついに短編特撮映画、「巨神兵東京に現わる」へ。休憩時間もそぞろに絶え間なく上映し続けているので、なかなか入るタイミングが難しいです。漏れる音で「終わった?」と思った瞬間に入ったのですが、外へ出る人は少なく、座席はギッシリ。前の上映からそのまま、いい席に移っただけで何度も見ている人が多いのでしょう。それでも一番前の真ん中近い席があいていたのでそこへ。
予想はしていましたが、ほとんどストーリーらしきものはありません。ただただ、巨神兵のビームによって東京が火の海へと化していく様を描いているのみです。ただ、その技術はまさに集大成。合成のみデジタル技術を頻繁に使っていたのは残念ですが、ミニチュアを壊す、というより街を壊す映画を娯楽として作りにくい昨今において、なおミニチュア破壊に新しいアイディアを、おそらくは使うアテのなかったころに暖めていたアイディアをつぎ込む貪欲さには、頭の下がる思いです。そして、これら特撮技術で作られた映像が、VFXを駆使したデジタルCG映像になんら劣らないどころか、圧倒する迫力を見せ付けることが可能なことを見事証明してくれました。これは、先にも書いたベテランたちの技術とアイディアの結晶である点と、ストーリーも演出もない点でしょう。おそらく樋口氏ら特撮の面々はこういう映像が一度撮ってみたかったのだと思います。特撮によるミニチュア破壊の魅力を堪能するのなら、本編も音楽も演出も無い方が迫力を感じられることがあるのです。破壊の美学、特撮映像の探求。それだけあれば良い映像を作っていいという機会はそうそうあるものではありません。だからこそ、あれだけのものができたのです。
特撮はなぜ面白いのか。なぜVFXがどれだけ発達しても、ミニチュアを使った映像が最高という人間が絶えないのか。それは「作ったものを壊す」それがもっとも単純で純粋な人間の欲望だからとわたしは考えています。子どもが最初にする遊びは、本人以外には分からない何かを積み木などで作ったものを壊す遊びでしょう。もっとも本能に忠実な娯楽、それが破壊です。しかも、それが一所懸命作ったものならなおさらです。細心の注意を払って作り上げた精巧な造形物、これらが一瞬で崩壊する様。それをなすのが魂を揺るがすような巨大怪獣や超兵器だったら、ツマラナイわけないじゃないですか。
ハリウッドの特殊撮影は「スターウォーズ」を境に新たな歴史が始まったといわれています。ストップモーションアニメといわれる日本のやり方とは違う手作業の時代から、コンピュータを使った機械的映像表現の時代へ。そして人形アニメはCGアニメに置き換えられ、VFXとなりました。しかし、VFXに破壊の美学があるでしょうか? アレが優れているのは、全くの異世界を作り出すことです。それと特撮のもっとも苦手とする水の表現に関してはVFXにはかないませんが、街の再現とその破壊に関しては、巧の技がCG表現に劣ることは決してありません。その道を途絶えさせ、博物館に展示でもしなければ触れてもらえないところまで追い込んだのは、大して知りもしないくせに評論家ぶって人があがめる旧作だけを評価し、「有名なキャラを使った新作にケチを付けるオレかっこいい!」という自己満足に浸り続けた、わたしのような特撮ヲタの仕業なのです。
「オレたちは絶滅危惧種」という博物館内で流されていた映像に収録されていた語りが耳に残ります。ハリウッドのVFX表現に脳を支配され、どんな映像もCGに見えてくるようになってしまった我々現代人。その表現力を開放するには、やはり手作りのミニチュアが活躍する特撮こそ最適と思うのです。と、いいますか、少なくとも「巨神兵東京に現わる」を撮った樋口氏はそういうものを作る側にいるのですから、もっと自分から作るべきだと思うのですが。
最後におみやげコーナー。ついつい余計なもの〜なんのためらいもなくノコギリン対帰ってきたウルトラマンの東京タワー入りポストカードを真っ先に手に取ったのはわたしだけか?〜を買ってしまいますが、やはり定番パンフレットが鉄板。このパンフレット、常識を超えた厚さによって、単なる展示会のパンフというより特撮の図鑑とよんだほうが正しいと思える内容となっています。これを買えるだけでも行った甲斐があった、は少々言いすぎですがそれに近い価値はありました。ただ、巨神兵のフィギュアが売り切れとなっていたのは残念でなりません。
そう、外出です! ようやく行ってきました東京都現代美術館開催イベント、「特撮博物館」です。月曜日は休館(来週の13日はやってるそうです)、火曜日は別件で忙しく、明日木曜日は帰郷するのでその前に部屋の掃除をしなければなりません。土日の人ごみを避けるためには、今日しか行ける日がなかったのです。
降り立ちますは東京メトロ半蔵門線清澄白河駅。ちょっと肌がチリチリくるような暑さの中を歩きます。電信柱には現代美術館を示す案内標識の役割を果たす広告が貼ってあり、それを目印に行けば、少々距離(公式には徒歩9分)があっても迷う心配はありません。東京都内というよりも少し地方都市の中心から外れた商店街のような雰囲気を漂わせる街を抜けると、いかにも東京の美術館、といわんばかりの巨大な建物が聳え立ちます。こんな街と並存していたり一等地にあったりするのが東京の大型美術館・博物館ですが、地方では小規模なものはともかく大規模なものはまずありえません。大型の美術館や博物館は地方でも決して珍しくありませんが、それらは過疎地や開発地など余った土地にあるものです。この間イベント目当てに行った某大型美術館なんぞ、裏から弥生時代の遺跡が出てくるような人里離れた山奥でした、誇張表現でなく。
そんな建物に「なんで最近の美術館の出入り口やロビーってどこも構造が似てるんだろう」と思いつつチケットを買います。ネットで事前購入もできますが、その場で買ってもなんの問題もないほどチケット売り場はすいています。さぁ、MAPをもらって入場です。
・・・なんだこの混み方は・・・。
ロビーはほとんど人がいなかったのに、中は平日が信じられないほど人がいます。部屋の一つ一つは大して広くないので特にそう見えるんでしょうが、最初の部屋だけで20人以上はいたでしょうか。もちろん休日ならこの二倍、いや三倍くらいいてもおかしくありません。これでもゆったり見られるほうなんでしょう。
しかし、みんな最初の部屋から先へ行きたがらないのも無理はありません。最初の部屋、「人造」のミニチュアからすごいです。「モスラ」の撮影に使ったものを再現した東京タワーがやや浮いていますが、それ以外はおなじみ超兵器の数々が心を奪います。「海底軍艦」と「惑星大戦争」のダブル轟天の雄姿。パラボラ兵器の代表格、メーサー殺獣光線車(サンガイのものではなく、ゴジラXメカゴジラで使ったものでしたが)と、バリエーションともいうべきハイパワーレザービーム車。ある意味特撮ヲタ定番の作品よりそうでない作品のミニチュアの方が貴重です。そしてなんと言ってもメカゴジラ第二号・・・。腰が抜けそうになるほど痺れました、こいつにあえたあまりの感激ぶりに。解説を読む限り、庵野氏は「ゴジラ対メカゴジラ」の初代メカゴジラの代用品として「メカゴジラの逆襲」の第二号を展示したようです。ただ、この第二号は初代のスーツを改造したものでしょう。劇中の設定でも破壊されたメカゴジラのパーツを集めて改修したものが第二号とされており、おそらく間違いないと思います。つまり、このメカゴジラは第二号にして初代でもあるのです(そう思って観察すると改造の跡が残っているような)。よく見ると手が新造であるなど完全な状態ではありませんが、40年も前に作られたスーツが、こういう展示会以外に使い道がないにもかかわらず残されていた、という事実に心が震えます。「マイティジャック」のマイティジャック号、「怪獣総進撃」のムーンライトSY-3・・・。気をつけないとこの部屋だけで体力を使いきってしまいそうなほど初っ端から密度が濃厚です。
「超人」の部屋では「怪傑ライオン丸」のライオン丸マスクの異質さに脅かされつつも、全身スーツが残っているはずのグリーンマンがマスクしかなかったことに少々ガッカリ感を覚えたり。スペースの都合でカットした展示物も当然あるのでしょうけど。ニヤリとさせられたのがデザイナー成田亨氏の画。ウルトラマンをデザインした成田氏はカラータイマーを付けることに反対だったため、後年書いた版でもウルトラマンには絶対カラータイマーがついていないことで知られていますが、ザラブ星人が化けた「ニセウルトラマン」の画にはちゃっかりカラータイマーがついているのです。カラータイマーは偽者にこそふさわしいと思っていたのでしょうか。なぜかこのコーナーに展示されていた「スターウルフ」のバッカスIII世の存在感が、ヒーローを差し置いて圧倒的でした。
「力」の部屋は「ガメラ」や「日本沈没」と言った樋口氏が手がけた作品を中心とした最近のミニチュア中心。細やかなつくりに感心しつつも「どこかで見た」感はガメラとそのセット以外はあまりなし。いよいよ舞台は地下へ。特撮ヲタなら一度は入ってみたい、特撮倉庫を再現した舞台です。一見したところ見過ごされそうな細かいところ(天井の飛行機とか、出口付近のゴム長とか)まで、ところせましと特撮に使われたであろうアイテムが満載。まるで巨大なおもちゃ箱です、最初にもらったMAPの裏側がガイドとして役に立ちました。その中でも、やはりど真ん中に置かれたゴジラの足が目を引きます。「怪獣大戦争」で作られ、「ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃」でも改造されて使われたけど、どっちも効果としてはイマイチ感があった巨大足ですが、こうして倉庫に置かれているには最高の一品です、シビれます!出口のキングギドラはちょっと浮いてますが、怪獣スーツを各所に配置するにはやむなしかも。その先にはゴジラ(VSデストロイアのスーツを改修したものかと)のスーツもありましたが、メカゴジラ・ガメラ・モスラ・キングギドラと全身スーツを眺めて怪獣になれた目にもなおケタ違いの存在感を見せるのは、さすがとしかいいようがありません。
こうした展示コーナーをうろうろしつつ、順路はついに短編特撮映画、「巨神兵東京に現わる」へ。休憩時間もそぞろに絶え間なく上映し続けているので、なかなか入るタイミングが難しいです。漏れる音で「終わった?」と思った瞬間に入ったのですが、外へ出る人は少なく、座席はギッシリ。前の上映からそのまま、いい席に移っただけで何度も見ている人が多いのでしょう。それでも一番前の真ん中近い席があいていたのでそこへ。
予想はしていましたが、ほとんどストーリーらしきものはありません。ただただ、巨神兵のビームによって東京が火の海へと化していく様を描いているのみです。ただ、その技術はまさに集大成。合成のみデジタル技術を頻繁に使っていたのは残念ですが、ミニチュアを壊す、というより街を壊す映画を娯楽として作りにくい昨今において、なおミニチュア破壊に新しいアイディアを、おそらくは使うアテのなかったころに暖めていたアイディアをつぎ込む貪欲さには、頭の下がる思いです。そして、これら特撮技術で作られた映像が、VFXを駆使したデジタルCG映像になんら劣らないどころか、圧倒する迫力を見せ付けることが可能なことを見事証明してくれました。これは、先にも書いたベテランたちの技術とアイディアの結晶である点と、ストーリーも演出もない点でしょう。おそらく樋口氏ら特撮の面々はこういう映像が一度撮ってみたかったのだと思います。特撮によるミニチュア破壊の魅力を堪能するのなら、本編も音楽も演出も無い方が迫力を感じられることがあるのです。破壊の美学、特撮映像の探求。それだけあれば良い映像を作っていいという機会はそうそうあるものではありません。だからこそ、あれだけのものができたのです。
特撮はなぜ面白いのか。なぜVFXがどれだけ発達しても、ミニチュアを使った映像が最高という人間が絶えないのか。それは「作ったものを壊す」それがもっとも単純で純粋な人間の欲望だからとわたしは考えています。子どもが最初にする遊びは、本人以外には分からない何かを積み木などで作ったものを壊す遊びでしょう。もっとも本能に忠実な娯楽、それが破壊です。しかも、それが一所懸命作ったものならなおさらです。細心の注意を払って作り上げた精巧な造形物、これらが一瞬で崩壊する様。それをなすのが魂を揺るがすような巨大怪獣や超兵器だったら、ツマラナイわけないじゃないですか。
ハリウッドの特殊撮影は「スターウォーズ」を境に新たな歴史が始まったといわれています。ストップモーションアニメといわれる日本のやり方とは違う手作業の時代から、コンピュータを使った機械的映像表現の時代へ。そして人形アニメはCGアニメに置き換えられ、VFXとなりました。しかし、VFXに破壊の美学があるでしょうか? アレが優れているのは、全くの異世界を作り出すことです。それと特撮のもっとも苦手とする水の表現に関してはVFXにはかないませんが、街の再現とその破壊に関しては、巧の技がCG表現に劣ることは決してありません。その道を途絶えさせ、博物館に展示でもしなければ触れてもらえないところまで追い込んだのは、大して知りもしないくせに評論家ぶって人があがめる旧作だけを評価し、「有名なキャラを使った新作にケチを付けるオレかっこいい!」という自己満足に浸り続けた、わたしのような特撮ヲタの仕業なのです。
「オレたちは絶滅危惧種」という博物館内で流されていた映像に収録されていた語りが耳に残ります。ハリウッドのVFX表現に脳を支配され、どんな映像もCGに見えてくるようになってしまった我々現代人。その表現力を開放するには、やはり手作りのミニチュアが活躍する特撮こそ最適と思うのです。と、いいますか、少なくとも「巨神兵東京に現わる」を撮った樋口氏はそういうものを作る側にいるのですから、もっと自分から作るべきだと思うのですが。
最後におみやげコーナー。ついつい余計なもの〜なんのためらいもなくノコギリン対帰ってきたウルトラマンの東京タワー入りポストカードを真っ先に手に取ったのはわたしだけか?〜を買ってしまいますが、やはり定番パンフレットが鉄板。このパンフレット、常識を超えた厚さによって、単なる展示会のパンフというより特撮の図鑑とよんだほうが正しいと思える内容となっています。これを買えるだけでも行った甲斐があった、は少々言いすぎですがそれに近い価値はありました。ただ、巨神兵のフィギュアが売り切れとなっていたのは残念でなりません。