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スマートテレビの定義と時代

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ネットを見ようが週刊誌を見ようが、テレビ(実質地上波)の話題に触れれば必ず「テレビ番組はつまらなくなる一方」としか書いていません。それはおおよそ事実なので何の反論も出来ませんが、深夜番組に限って言えば地上波でも面白い番組が出ることがあることから、決して番組製作側の能力欠如でもアイディアの枯渇でもないように思えます。いわゆるゴールデンタイムの番組がつまらないのは番組の進行よりもタレントの数を映すこととトークをさせることに時間を割いていて、演出がグズグズになるのが大きな原因と考えています。結局、事務所やスポンサーとの柵、それに加えて他の番組や映画・イベントの宣伝と言った要素を無理矢理入れているのが番組をつまらなくしているのではないかと。それと番組の長時間化のための時間稼ぎですかね。30分でやればいい番組を1時間かけてやらせるから尺を稼ぐ必要が出てきてヘンな構成になるんですよ。

どれも番組制作費が減らされているのが根本的な原因と思われます。連休の間に、「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会 (第64回)」が行われており、その配布資料が総務省サイトで公開されています。ここでも、広告収入の減少による番組制作費の削減が謳われています。
ですが、それへの対策・・・つまり番組制作費が削減されたことによる番組の質の低下を懸念する提案はほとんどなく、もっぱら海外への番組販売の競争力低下対策や、番組配信による二次収入の強化などばかり提案されています。テレビ局も企業ですから、広告収入の減少の穴埋めを他の事業で行うための強化案を考えるのは、それは当たり前です。ですが、地上波テレビというのは日本国民への情報提供という公的な側面も持っています。そちらを手抜きしてでも番組販売の強化を総務省の公認の元に行う、というのは、電波利用権の特権を与えられている身としてはやっていいことなのでしょうか。この中身だと、「本来二次価値のないものからでも収入を経られる体制を作る」に今後テレビ局は注力することになっていきそうです。なにせ例の公衆送信権のおかげで番組の利用に関して最大の発言力を持つのは、番組制作会社ではなくテレビ局、ということになってしまいましたから。
まぁ番組の質を考えるのは別の委員会や会議なのかも知れませんが、「質を高める努力をした上で販売を強化」というステップを踏んで欲しいものです。

その話はちょっとおいておいて、Lenovoが、日本ではなく中国向けにですが、「スマートテレビ」の販売を始めるようです。

Lenovo、Android 4.0搭載スマートテレビ「K91」を発表

スマートテレビ、とは言いますが、この機種に限って言えばテレビのAndroidOSが組み込まれたのみです。先の資料でも「スマートテレビの国際標準化にむけた提案」を謳っており、日本は国でスマートテレビの標準規格を決めて勝ち取ろうとしています。
ですが、そもそもスマートテレビってなんでしょうか? 名前ばかり先行していて実態はいまだモヤモヤとしたものにしかなっていないように思えます。
iOSやAndroidOSが動いていればスマートテレビですか? そんなバカな話はない。アプリの追加が出来たり、有料の動画配信サービスの視聴が出来ればスマートテレビですか? ちっとも新しい気がしませんが。「スマートテレビ」と言われて出てきそうなのは今のところこの程度でしょう。ですが、こんなものでいいのなら今売られているテレビパソコンはとっくの昔にスマートテレビです。
だって、WindowsというOSで動いていますし、動画配信だっていくらでも見られます。アプリケーションの追加にいたってはiOSとAndroidOSが束になってもかないません。それでも、あくまで「テレビパソコン」であって「スマートテレビ」とは呼ばれません。スマートテレビをテレビパソコンと別のものにしたいのなら、もっと別の概念を持つ必要があるのではないでしょうか。

わたしはわたしでかなり考えました。そこで出した結論は、「ハードの拡張を必要とせず、ソフトだけで処理してしまうのがスマートテレビ」と言うものです。具体的には

・チューナー不要。放送は全部インターネット経由で行う。新放送サービスが行われても、受信用ソフト(アプリと呼ぶべきか)を追加するだけで全部受信出来る。外付けチューナーを買う必要を無くしてしまう。もちろんアンテナ設置の手間も不要になり、衛星放送の欠点である周囲の環境に受信を左右されない。
・録画機能もレコーダーも不要。全部クラウドで補う。こっちで行うのはあらかじめ「後で見る」チェックを入れておくだけ。もちろん後で「放送済み番組」から探す事も出来る。あらかじめ行うのは後で探すことも出来るから。録画の時に家庭内で電源が入る必要がないので省電力にもなる。一度でも保存した場合、利用権は永久保証される。メディアへの保存は有料サービスでも可。
・新放送に新しい圧縮方式が使われるようになっても、ソフト的な追加のみで対処可能。
・その他、新しい放送が考え出されても、原則ソフトの追加のみで対応できるようにする。

当初は能力の陳腐化が激しく、テレビの買い換えサイクルも短くなるでしょうが、いずれパソコンのように熟成して一度買えばそこそこ長く使えるものとなっていくでしょう。つまり、AV機器メーカーにとって大幅にビジネスチャンスを失う内容です、地上波もその特権を失います。でも、最低このくらいやらないと「次世代テレビ」としてのインパクトがないように思うのです。少なくとも、「コントロールはAndroidで出来ます」「もっとTVの配信が受けられます」がスマートテレビだ、というより説得力があるように思うのです。

ですが、また先の資料に戻りますが、これを見る限り地上デジタル放送で守り抜いた旧体制をさらに守り続けるための内容が多く、発想も古いものです。

・誰も完成図を描けない「放送と通信の連携」へのこだわり。実質的には如何に通信を放送に飲み込ませるか、のアイディアを出させようとしているが、そもそも無理。
・ごくまれな瞬間を除いて(特別な事件等)積極的利用者が増えるとは思えないモバイル機器でのリアルタイムテレビ放送受信のためくらいにしか使えないTRMP方式でのスクランブルを「その業務の社会的重要性」と表記。仮に特別な事件があったとしてもネット動画配信があればそっちで足りるはず。
・PCでのハードな録画とテレビ内蔵のお手軽録画に挟まれて中途半端になり、積極的に利用されなくなっているだけのレコーダーの「ダビ10」を「利用者は不都合を感じていない、社会的に定着しているのではないか」と分析。もはや隠すつもりもないのか、「クリエーターへの対価」と表記しつつもコピー制御はパッケージ販売のためであることも明記。

これらを並記している以上、その存在の邪魔をするものを「スマートテレビ」にするとはちょっと考えられません。
ひょっとして、総務省主導で進めようとしているスマートテレビの標準規格というのは、AV機器メーカーがビジネス機会を損失したり地上波がその存在感を失ったりしないよう、ソフトの適応範囲に制限を設けることを目的としているんじゃないんでしょうか。だとしたら、スマートテレビは名前だけの飼い殺しになり、新しい時代など来ないのかも知れません。その理由が、お金かけた地上デジタルがもったいないから、だったら、わたしは泣きますとりあえず。

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