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Channel: 録画人間の末路 -
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特撮とアニメの融合作品

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SSSS.GRIDMANのBDが届きました。もちろん放送分は保存してあるので特典目当てならDVDでもいいかと思ったのですが、価格が変わらないのでBDにしておきました。

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現時点ではまだ全話放送されていないのですが、放送前から謎めいていた部分のヒントや回答はあらかた示され、後は最後まで見るだけ、となっていますので、まずは放送分を全部見てからディスクを視聴したいと思っています。主なターゲットは昔の特撮のファンと踏んでいたのですが、どうやら特撮を見ていないアニメファンの評判も悪くないようですので、謎部分もすんなり受け入れられているのでしょうか。むしろ昔の特撮ドラマのストーリーを引きずっているオールドファンの方がGRIDMANを理解していないのかも知れません。


さて、これだけで終わるのもなんなので、特撮で作られた作品のアニメ化ものでも書こうか・・・とも思ったのですが、わざわざ取り上げるような作品がありません。全く別物になるか、先に作られた特撮作品の方が半ば無かった作品扱いになるかのどちらかばかりです。一応例外もありますが、その作品の場合アニメ特撮両方を対等に見て語れるほどわたしはよく見ていません。ので、アニメと特撮の両方を使った作品についてちょっと書きましょう。

実のところ、特撮もアニメも現実にはあり得ない状況、あるいは現実をそのまま使うのが難しい映像を代用する、という点では同じものです。特撮の効果の代わりにアニメが使われていても別に不思議ではないわけです。現在のCGを大量に使った映像なんてデジタル製作のアニメと何が違うのか、ですし、人形を一コマずつ動かして撮影する特撮技術もストップモーションアニメと呼ばれるアニメ表現の一種です。ただ、絵で描いたセルアニメを映像の効果として使った作品となるとそれほど数がないのです。ウルトラマンのスペシウム光線とかも厳密にいえば描画したアニメ表現ですが、本稿ではもうちょっと範囲を絞ってセル画を使ったものだけにしておきましょう。
特撮の代わりに実写ドラマへかぶせる特殊効果をアニメにした作品と言えば、なんと言っても手塚治虫原作で若き日の水谷豊が主演したことでも有名な「バンパイヤ」でしょう。"ヴァンパイア"ではなく"バンパイヤ"なので、吸血鬼ではなく動物に変身する能力を持った人間~作中で活躍するのは主に狼ですが~を差します。その変身後の狼をアニメで表現しています。アニメ部分だけ見てもかなり出来が良く、ほとんど類似作品がない原点でありながら決定版という感じもあります。


化け猫の声がモスラ(笑)

手塚治虫原作の映像化作品はそれこそ数多く存在しますが、本人の意向を反映してか、実写作品でもアニメを使うことを忘れないものが多い印象です。代表作「鉄腕アトム」の実写ドラマでも、冒頭にはアニメを使ってアトムの周辺の説明が行われていましたから。もちろん主題歌が有名なアニメ版よりも早く作られました。手塚治虫本人は実写版アトムの出来に満足していなかったようですが、冒頭部分を作った経験はのちのアニメに生かされたのでしょう。
原作は手塚治虫本人でも直接映像つくりに関与していない作品は多々ありますが、それらにもアニメ表現は使われています。日本初のテレビ向けカラー連続特撮ドラマでピー・プロダクションの「マグマ大使」では一部の宇宙船やミサイル発射などの表現に、いわゆるセル画ではありませんが絵による表現が使われています。これは予算の削減の意味もあったでしょう。まともな特撮としては同時期に13日遅れて放送が開始された「ウルトラマン」がありましたのでそりゃ普通に比較すれば「マグマ大使」は見劣りします。が、異なる表現方法も使ったことで今見る分にはこちらも味があっていい感じです。
東宝によって作られた実写映画の「火の鳥」。出番は少なめですが、登場する狼がセル画で書かれています。なぜか当時の流行歌「UFO」の前奏に合わせて同じ踊りを踊ったりして若干悪ふざけの印象もありますが、狼にセルを使ったのはおそらく「バンパイヤ」を意識したのでしょう。また、火の鳥は映画でははっきりと姿を見せない映し方ですが、セルで描かれています。
その逆、メインドラマはアニメで、それを活かす効果として実写との合成が行われた作品もあります。世界初の大人向けアニメ、「アニメラマ」と称して劇場公開された「千夜一夜物語」です。

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手塚治虫の原作ではありませんが、製作を手掛けています。特撮というほどではないですが、バグダットの街並みがミニチュア再現され、クライマックスでは登場人物が忍び込むシーンはそのミニチュアとの合成となっています。他に実写合成としては船のアニメと海の実写というやり方が行われており、こちらはかなり良い効果をあげていますが、なぜわざわざ手間のかかるミニチュアで街並み表現をしたのかは謎。
作品について一言語りますと、所謂「千夜一夜物語」ではなくあくまでそれをベースにした独自の作品となっています。当時の世相を反映してか、主人公アルディン(アラジンをもじったものか?)の平気で物や人、立場を投げだす無責任ぶりはとても物語の主人公とは思えません。が、だからこそ人はそんなに単純じゃない、安易なキャラクターにさせていない細心の注意が伺えます。個人的に最後のセリフは全てをすっきりさせる名台詞だと思う。なお美術としてキャラクターデザインなどを手掛けたのは「アンパンマン」のやなせたかし。


一方、円谷プロはウルトラシリーズの行き詰まりを感じてか、1970年代後半にアニメを使った作品を手掛けています。最終的には完全アニメ作品「ザ★ウルトラマン」を経て原点回帰の特撮「ウルトラマン80」に至るわけですが、そこまでは試行錯誤が見られます。
一番最初に円谷プロがアニメに手を出した作品が「プロレスの星アステカイザー」です。原作永井豪・石川賢、スーツを使った戦闘員が多数登場するアクションなど雰囲気は東映の作品に近いですが、円谷プロ作品です。ストーリーのほとんどは実写アクションなのですが、クライマックスの敵レスラーとの対決シーンになると「カイザーイン」の掛け声とともにBGMが主題歌に変わって光学合成効果が入り、アステカイザーともどもアニメの姿に変わってしまうのです。実写では不可能な動きも出来るアニメでありえない技を、というアイディアはよかったのですが、実際にはあまり動いておらず、違和感だけが残る印象です。ちなみに本作で悪役や若手レスラー役で、のちに新日本プロレスで活躍するタイガーマスク・佐山聡の名が頻繁にクレジットされています。ひょっとしたらこの作品への出演がキッカケでタイガーマスクに抜擢されたのかも知れません。
「アステカイザー」は効果としてアニメが使われましたが、アニメパートが独立していて合成などは行われませんでした。その後作られた「恐竜探険隊ボーンフリー」は人物をアニメ、恐竜を人形アニメ、メカやそれと直接絡む恐竜のシーンはミニチュア特撮で、という別の視点で作られたハイブリッドな作品となっており、アニメキャラとメカや恐竜の合成が行われます。ただ、人形アニメの採用であまりに作るのに時間がかかったせいか、全25話と比較的短い話数しか作られませんでした。主人公チームは熱血・クール・三枚目・ヒロイン・子供というまるで東映の巨大ロボットもののような組み合わせになっています。なんとなくこの時期の円谷プロは東映の作風に影響されていたように思えてなりません。ただ、クールに相当するゴンさんが三枚目風の外見のためか、勘違いされる傾向にある感じです。本作の恐竜は保護される存在として描かれましたが、力及ばず恐竜が死んでしまう話もいくつもありました。特筆すべきは現在では魚竜であることがはっきりしているエゾミカサリュウが肉食恐竜として登場していること。発見された頭部の化石の印象がティラノサウルスをイメージさせるものであったため、当初は肉食恐竜と思われて人気だったようです。ただ専門家の間ではすでに魚竜の可能性が高いと思われていたようですが、人気に水を差さないために肉食恐竜説が採用されたのでしょう。
恐竜シリーズの第二弾として作られた「恐竜大戦争アイゼンボーグ」は前作の反省もあったのか、人形アニメは地下の恐竜帝国の全景シーン用につくられたものがつかいまわされるだけで人物はアニメ・特殊効果はミニチュア特撮となりました。また、バトルのカタルシスがなかったことを踏まえて本作の恐竜は(無理矢理改造されて)破壊活動を行う怪獣と化し、やられ役となってしまtっています。後半は完全な怪獣となってしまいました。本作では恐竜軍団が街に攻めてくることから日常シーンが多く取り入れられ、作品当初はかなり細かく作られたミニチュアの街の中でアニメの人物が生活する様が描かれる、唯一無二の作品となっています。残念ながら途中で失速したのか、後半はミニチュアの代わりに実景の写真を背景に使うのが主になってしまいました。「火の鳥」と同じように、やっぱり「UFO」に合わせて踊るシーンあり。
アイゼンボーグは中東で人気が高く、「またアイゼンボーグを見たい」という思いからプロジェクトが立ち上がり、その要請で昨年ドキュメンタリーと当時のデザインを再現した特撮パートを組み合わせた「帰ってきたアイゼンボーグ」が作られ、YouTubeで日本語版が公開されました。



残念ながらこのドキュメンタリーで語られた新作シリーズは今なお実現に至っていませんが、「SSSS.GRIDMAN」は円谷プロから見た場合、このプロジェクトからの派生なのではないか、という気がしてなりません。中東の人はガッカリしたかも知れませんが。
恐竜シリーズはこの後「恐竜戦隊コセイドン」が作られましたが、こちらはアニメを使わない実写特撮ドラマになっています。

ああ、最近裏でいろいろやっていたので書きすぎた(笑)。それにしても手塚治虫の映像に掛ける情熱のすごいこと。本当は円谷プロ作品を重点的に書いて手塚作品は触れるだけ、にするつもりだったんですが、調べれば調べるほどあの人が常識で測れない超人であったことが伺えます。マンガの神様、なんて呼ばれることもありますが、漫画家という視点だけで手塚治虫を語るのはもったいない気さえしますね。手塚治虫の息子が父のアニメよりも円谷プロ作品「ウルトラQ」の方をみたがった、なんて話も聞いたことありますし、一時実写の取り込みに積極的になったのは少しは「打倒円谷プロ」の思いがあったから・・・なんて考えるのは穿った見方でしょうか。

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