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Channel: 録画人間の末路 -
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「ウルトラマンになりたかった男」CSで放送

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世間的にはこの記事を書いているは参議院選挙であり、わたしももちろん投票はしてきましたが、実のところ投票さえ終わってしまえばどうせ我々一般人は蚊帳の外。もはや離れたところから眺めてグチを言うくらいしかできることはありません。

と、いうわけですでにわたしは頭を切り替えて。2016年7月10日はあの”ウルトラマン"放送50周年。第一話が放送されてからちょうど50年の日なのであります。東京あたりの在住者なら開催されているイベントにも参加できるのでしょうが、地方ではせいぜいテレビで楽しむのが関の山、と言っても地上波は選挙一色でそっちには興味持ってくれなくて、もっぱら衛星放送なんですが。ただし、CSを含めれば衛星放送だけで見切れないほどの特別番組や放送がなされており、ゴジラやガメラの映画の放送と合わせるとそっちの消化だけで当分DVDも買う必要なしの状況です。
その中でも楽しみにしていたのがTBSチャンネル1で放送される"ウルトラマンメイキング風ドラマ"の二本。ただし、何が起こったのかそのうちの一本「ウルトラマンをつくった男たち 星の林に月の舟」は直前になって別の番組に差し替えになってしまいましたので大変ガッカリ。ただ、もう一本「ウルトラマンになりたかった男」は無事放送されました。前者が実装時昭雄監督の書いた本を元に作られたドキュメンタリー風ドラマなのに対してこっちはドラマスペシャル枠で作られた完全なフィクションです。実はわたし、このドラマの実放送の時録画してあって、そのビデオテープをのちにPCにキャプチャーしてDivXに圧縮したものを保存してあるのです。多分あれから特別な場合をのぞき、衛星放送でも全く放送されていなかったはず。放送されたのはなんと1993年。26年もたってようやく当時より画質のよい映像を入手することができました。もっとも撮影はSDのビデオ撮りされたものですしリマスターでもないようなので画質はそれなりではありますが、ヘタに超解像処理されるよりはいいです。

話は新作ウルトラマン映画を従来通りのぬいぐるみ特撮で撮影するベテランの特撮スタッフと、CGを使った新しい技術で撮影しようとする新鋭特撮監督や若いスタッフの対立を中心にドラマとして描いたものです。ドラマの中では頻繁に特撮の撮影シーンが再現され、その様子は実際の映像作品と比べてなんら遜色ありません。現場の興奮が伝わってくるようです。ですが肝心のCG怪獣が映像面もドラマ面もイマイチ。ウルトラマンよりも5倍も10倍も大きな怪獣、ゴッドキングを表現するにCGを使うというのはいいのですが、それとぬいぐるみのウルトラマンを違和感なく戦わせる方法が分からず、結局ベテランスタッフのアイディアと力に頼る・・・というものになっているのですが、超巨大怪獣の手だけ作ってそれとウルトラマンを戦わせる、という方法は誰でも思いつきそうですし、CGをそのもっとも優れた活用法である合成に使わず、霧のスクリーンに怪獣を映し出すなどどうにも納得がいきません。ラストに半分オマケのように撮影されたゴッドキングとウルトラマンの戦いを描いた再現シーンがあるのですが怪獣は首だけ伸びてきたり本体は動かず腕も見えているのに横から巨大な腕が飛び出してきたりとどうみても具合のよろしくない出来(スタッフ・ロールの絵コンテ担当にシン・ゴジラの樋口真嗣監督の名があるのですが・・・)。実際の映像を見る限りCGは限られた効果にしか使われていない感があり、本編で語られた撮影方法、特に霧のスクリーンを使ったスクリーンプロセス法は実際には使うのが難しく、別の形で撮影したものをそれっぽく撮ったように再現する方法が取られたのでしょうか。
本作が放送された1993年と言えば、あの「ジュラシック・パーク」でCG特撮の威力が示された年です。日本特撮は1980年代に吹き荒れた"SFX"というアメリカ式特撮の波はしのぎ切りました。もっとも日本ではSFXという文字だけが独り歩きし、実態を誰も理解していなかったというものもありましたが。そして90年代になってやってきた"CG"という第二の波。本作はそれに贖いきれないが、それでも特撮は特撮なんだ、という意地が前面に押し出された内容となっています。脚本を書かれたのは「ウルトラマン」や「ウルトラセブン」でも実装時昭雄監督作品などで参加したベテランの佐々木守氏。昔ながらの特撮を知るものとしての立場から書かれたのでしょうが、残念ながらCG、というよりVFXをあまり理解せずに書いた形跡が見られます。かの「ジュラシック・パーク」にしたところでCGは一部に効果的に使われたのみで、大半はアニマトロニクスを使って撮影されており、CGに頼らない多彩な表現によって撮影された恐竜をカメラワークと編集技術を駆使して違和感なくつないだところに本当の良さがあるのですが。
本作はむしろその後の20年を予言した感があります。現在も作られているウルトラマシリーズ。特に劇場版ではゴッドキングのようなウルトラマンの何倍もある怪獣が毎回のように登場し、それらはCGを使って表現されています。それと戦うウルトラマンも、カットによってはフルCGで描かれており、本作では否定していた表現が当たり前のように使われています。日本の特撮も第二の波であるCGには逆らえなかった。それでも、「怪獣ったって生き物だよ。心臓がなきゃダメだ、全身が脈打ってなきゃダメなんだ」という本作を象徴するセリフにもあるような抵抗を見せ続ける日本特撮のターニングポイントとなったドラマかも知れません。この時期の円谷プロは映像作品はあまり作っていませんでした。「ウルトラマンティガ」で本格的にテレビに特撮作品を復活させるのは、この3年後の1996年のことなのです。
なお、本作のCG作成用として本編で使われているPCは富士通のFM TOWNSII。確か「ハイパーメディアパソコン」とか言うキャッチが付いていたように覚えていますが、作成用としても使える、ということを押し出したかったのでしょうか。いろんな意味で時代を感じます。

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