別の作品の主役同士が一つの作品で激突! B級がプンプンする反面これほど胸躍る設定もないという物です。古くは怪盗ルパンシリーズでのシャーロック・ホームズとの対決(結局ホームズの名を少し弄ったとは言え、これをルパンの作者本人が書いたんだもんなぁ)なんてのもありますが、醍醐味は映画にありましょう。最近(と、いっても2004年)の「エイリアンVSプレデター」はまだ記憶に新しいところ。ともすれば設定が崩壊しそうな対決物という分野の緊張感をギリギリでつなぎ止め、アクションものとして仕上げた本作はハッタリも利いていてなかなか楽しめる作品に仕上がっていました。が、続編「AVP2 エイリアンズVSプレデター」ではエイリアン人里で繁殖大暴れするという"やっちゃいけないこと"をやってしまい、前作がギリギリ保っていたラインが崩壊して終始B級テイスト満載。まぁそういうもの、大金はたいて作ったB級映画と思って見れば十分楽しい映画ではありますが。「エイリアン」オリジナルの監督のリドリー・スコットが「プロメテウス」の企画を引き受けたのは、「プレデターと戦ったトンデモ内容を深読みされてエイリアンの前日譚扱いされたらたまったものじゃない、正しい歴史を作ろう」なんて思いも最初はあったんじゃないか、と勝手に思っております。
この分野での最高傑作は「キングコング対ゴジラ」以外はありえないでしょう。全編コメディにしたのはちょっとアレですが、まとめるのが難しいゆえの開き直りもあったでしょう。その一方で特撮側が手前のゴジラではなく、客側のキングコングに敬意を表してこっちをメインに添えて演出したため、二大怪獣の戦いにしっかり殺陣を付け、そこだけでも存分に楽しめる作品に仕上げたことは、時代を考えなくても快挙であります。その結果、ゴジラはキングコングにガケまで追い詰められ、熱海城を盾にして最後の抵抗を試みるも結局もろとも海に落ちるのがやっとで、明らかに敗北する(公式見解は引き分け)決着を迎えるわけ何ですが。ただ、ゴジラを演じた中島春雄氏は「先に海に落ちたのはキングコングの方だから、相撲の"うっちゃり"でゴジラの勝ち」って半分冗談で言ってました。
キングコング対ゴジラとモスラ対ゴジラ、それとゴジラVSモスラ。幾多の怪獣対決映画を世に送り出した邦画の世界でも別映画で主役扱いだった怪獣の対決をクライマックスとした映画はあまり多くなく、あとは前座扱いでゴジラと、ラドンややはりモスラの対決シーンがある映画が少しある程度。一方洋画はホラー映画・怪物映画ブームの時代に複数の有名モンスターが共演し、対決する映画が結構あります。ただ、名前を勝手にパクっただけなんて映画も少なくなく、今となっては好事家が失笑まじりで見るだけの中身でしかないのでなかなかDVD化されないのですが。手元の録画ものには「ドラキュラ対フランケンシュタイン」なんてのもありますが、フランケンシュタインの怪物が有名なデザインを使えないのに少しは近づけようと中途半端に努力したためにひどいブサイクなことや、ドラキュラがアフロヘアーで指輪からビームを出すところが強烈すぎて、こっそり「サンダ対ガイラ」のラス・タンブリンが出ている(らしい)ことを含めてあまり記憶に残したくない映画であります。そんな中、先日DVD化された映画は割と良かったので紹介。
ワルプルギスの夜/ウルフVSヴァンパイア [DVD]ポール・ナッチー,ギャビー・フックス,アンドレス・レシーノ,バーバラ・カペル,パティ・シェパード有限会社フォワード
ワルプルギスの夜、なんていうと今は別の物を連想する人が少なく無さそうですが、なぜかこのタイトルで呼ぶことが日本ではお約束となっている本作。原題はWEREWOLF VERSUS THE VAMPIRE WOMEN 有名怪物を使っているにも関わらず名前まではパクってないところに意気込みを感じます。魔女伝説を大学のレポートにするためにやってきた女子大生が、よせばいいのに墓暴きをした上に魔女〜実は吸血鬼〜と思われるミイラの胸にささっていた銀の十字架を引き抜き、さらにはその際にケガをしてミイラに自分の血をかけてしまう、なんていう誰がどう見ても"やっちゃいけない"行動を重ねたために案の定吸血鬼復活。哀れ女子大生は餌食となって吸血鬼の眷属に。それにつきあってやってきたもう一人の女子大生(恋人あり)といい仲になった狼男が自分の呪いに悩みつつ彼女を守るために吸血鬼と戦うというもの。最後は狼男に変身して、不死であるはずの吸血鬼をあっさりと倒すものの、その直後に先の女子大生が狼男の心臓を吸血鬼用の銀の十字架でブスリ、殺してしまいます。「これであなたも自由になれるわ」とか言って呪いから解放してやったような口ぶり。が、所謂"吊り橋効果"で吸血鬼の恐怖に怯えていたときは頼りになった狼男も、それさえなくなってしまえばただの怪物、もはや用済み。ましてこの時点で元々の恋人が迎えに来ていましたので、どう見ても元鞘に収まりたくて始末してしまったようにしか見えません。一番残酷なのは吸血鬼でも狼男でもなく一人の女でした、というオチ。
脚本のハシント・モリナは本作狼男役のポール・ナッチーと同一人物だそうです。ポール・ナッチーは本作同様脚本と狼男役を兼ねた映画数作に参加しておりまして、その中には吸血鬼ではなくズバリのドラキュラが出てくるのもありますが、その多くはあまり出来が良くないものだそうです。が、本作は怪物も登場人物も絞っており、本人による狼男の凶暴な演技もあって低予算ながらなかなか面白くしあがっておりました。ただし、画質はあきらかにVHSからのダビング(冒頭に米国の原盤なんて出てくるが嘘だ!)で最低レベル。ただし、死体の後に蛆がわいたりしている場面がありますので、あまり高画質で見たくない映画ではあるのですが。
日本ではあまり人気がある印象はありませんが、いわゆる三大怪物"ドラキュラ"、"狼男"、"フランケンシュタインの怪物"の中で、アメリカで人気があるのは狼男だそうです。他の二人と違って本来は普通の人間であり、それゆえに感情移入しやすいらしいんですね、あちらでは。
その割に登場作品は少な目ですが、その分他怪物と共演する話が多いですね。通常は人間なのでストーリーを作りやすい点や、対決の時に変身させることで視覚的にも変化をつけやすいなどがあげられると思います。狼男はいわば変身ヒーローのご先祖でもあるのです(日本でイマイチなのは変身ヒーローがいくらでもいる点もあるのかも)。おそらくその狼男の対決ものとなった最初の作品が「フランケンシュタインと狼男」。かの「狼男」、原題 THE WOLF MAN の直接の続編です。「狼男」は間違いなく画期的作品でした。狼男自体は世界各地に存在する伝説をベースにしているため、映画もそれ以前から存在するので必ずしも「狼男」が元祖ではないのですが、狼男自体を確立させたのが映画「狼男」なのは間違いない話です。なにせ「狼男は月夜に変身する」をはじめ、「狼男に噛まれたものは呪いによって狼男になる」「狼男は銀の武器を使わないと死なない」などの設定はこの映画のために脚本のカート・シオドマクが考え、採用したものであるからです。「フランケンシュタインと狼男」はその直接の続編で、ストーリーも続いています。ただ、格調高い演出がなされた前作と比べるとストーリーはあまり練られていない俗っぽいもので(俗編・・・なんちゃって)演出も登場人物の説明で進む部分が少なくない、いかにもB級という内容となっています。ただ、前作では抒情的に死に行く狼男が人間に戻っていくところだけが変身シーンとして描かれたのに対し(人間→狼男は足だけ)、本作では本来観客が見たがるであろう人間から狼男へ変身するシーンがちゃんと描かれています。もちろん少しずつメイクを施しては撮影する、を繰り返して少しずつ変身していくように見せているので、ふつうはカットごとのつなぎ目の間に顔の位置などが少しずつ異なるブレが存在するのですが、本作では大変丁寧に撮影されていてそのブレが少ないうえ、前作から引き続き狼男役のロイ・チェイニーJrの瞬きについ目が行ってしまう間に、まるで本当に変身していくような様が見事に描かれています。なお、前作では「秋の月」というセリフがあるだけだった狼男と月の関係が、「満月」に改められました。前作のように毎晩変身ではストーリーに支障があるためと、視覚的にわかりやすくするためでしょう。かくして多くの人が狼男のもっとも基本的な設定と認識している「狼男は満月の夜に変身する」は誕生したのです。
内容は、前作で死んだ狼男ことラリー(ローレンス)が、一緒に埋葬されたお宝目当ての泥棒に墓暴きをされた際に月明かりを浴びて復活するところから始まります。「ワルプルギスの夜」も似たような始まり方ですが、多分こちらのマネをしたのでしょう。復活したラリーの目的はふつうの死ねる人間に戻ること。その方法をもとめて前作から引き続き登場のジプシーに助力を求め、フランケンシュタイン博士に頼ることを勧められます。が、博士は死んでおり、代わりにその娘に助けを求めるというもの。肝心の怪物ですが、廃墟と化したフランケンシュタイン博士の家の地下でたまたま氷の向こうになにかありそうだと思ったラリーが掘ったところ、怪物が眠っていたのでなんとなく復活させてしまったというだけの存在です。ちなみに怪物を演じるのは「魔人ドラキュラ」のベラ・ルゴシ。もともとユニバーサル映画の、「フランケンシュタイン」での怪物役はベラ・ルゴシに依頼する予定だったのですが、ほとんどぬいぐるみのようなメイクや物言わぬ怪物役を嫌って役を断ったため、変わって抜擢されたポリス・カーロフの怪物で映画は大ヒットし、ポリスを一躍スターにのし上げました。正直この映画は原作「フランケンシュタイン」の原型をほとんとどめていませんがそのインパクトはすさまじく、のちのフラケンシュタインものは映画に限らず原作ではなくユニバーサル版「フランケンシュタイン」をたたき台にしているほどの、ある意味究極の原作クラッシュを果たしています。結局ベラはこの映画で怪物役を演じることになってしまいました。ストーリーは「フランケンシュタイン」とはつながっていないようですが、同じユニバーサルの製作だけに「フランケンシュタインの怪物と言えばアレ」のメイクは使用されています。
ストーリーに戻りましょう。発見された手記により、人造人間を作った時の「エネルギーを与える」装置を逆につなげば人間からエネルギーを抜くことができることを発見。最初からラリーをおっかけていた医師の協力のもと、装置の修復が行われます。が、フランケンシュタインの娘は医師に「怪物も破壊してほしい」と依頼、ラリーよりも先に怪物と装置をつなぎます。ところがこの医師は実はフランケンシュタイン博士を強く尊敬しており、「彼の創造物を破壊することはできない、最大限のパワーの怪物をみたい」などと血迷ったことを言い出して装置から怪物にパワーを送り込んでしまいます。本作の怪物は物言わぬ凶暴な性格なため、フルパワーになった途端大暴れ、医師を吹き飛ばし、娘を連れ去ろうとします。そこへ、満月の光に照らされて狼男に変身したラリーが襲い掛かり、怪物との激闘開始・・・が、ベラが怪物を終始肘が曲がらないように演じていたためにあまり格闘も派手にならず、もっぱら組み合って倒れ込むを繰り返すだけのもの。最後は怪物を恐れた麓に人々が上流のダムを破壊して屋敷もろとも水に沈めて終わり。悪い意味でものちのB級怪獣映画のお手本になったようです。
フランケンシュタインと狼男 [DVD]ロン・チェイニー・Jr.,パトリック・ノウルズ,イローナ・マッセイ,ベラ・ルゴシジェネオン・ユニバーサル
この映画のさらに続編に「フランケンシュタインの館」というのがありますが、これは無意味にドラキュラも登場するわ、またしても怪物や狼男は氷漬けになっているわ、戦わないわでもう一つ見るところがない作品。なお、「狼男」「フランケンシュタインと狼男」を含む計5作品で狼男を演じたロン・チャイニーJr最後の映画出演が「ドラキュラ対フランケンシュタイン」なんだそうです。
さて、来月はいよいよファンの間では「死の大カマキリ」の名で知られた THE DEAELY MANTIS が「極地からの怪物 大カマキリの脅威」の名で出るな・・・。フフフ、楽しみ。願わくば、VHSからのコピーでありませんように・・・。
極地からの怪物 大カマキリの脅威 [DVD]クレイグ・スティーブンス,アリックス・タルトン,ウィリアム・ホッパーランコーポレーション
この分野での最高傑作は「キングコング対ゴジラ」以外はありえないでしょう。全編コメディにしたのはちょっとアレですが、まとめるのが難しいゆえの開き直りもあったでしょう。その一方で特撮側が手前のゴジラではなく、客側のキングコングに敬意を表してこっちをメインに添えて演出したため、二大怪獣の戦いにしっかり殺陣を付け、そこだけでも存分に楽しめる作品に仕上げたことは、時代を考えなくても快挙であります。その結果、ゴジラはキングコングにガケまで追い詰められ、熱海城を盾にして最後の抵抗を試みるも結局もろとも海に落ちるのがやっとで、明らかに敗北する(公式見解は引き分け)決着を迎えるわけ何ですが。ただ、ゴジラを演じた中島春雄氏は「先に海に落ちたのはキングコングの方だから、相撲の"うっちゃり"でゴジラの勝ち」って半分冗談で言ってました。
キングコング対ゴジラとモスラ対ゴジラ、それとゴジラVSモスラ。幾多の怪獣対決映画を世に送り出した邦画の世界でも別映画で主役扱いだった怪獣の対決をクライマックスとした映画はあまり多くなく、あとは前座扱いでゴジラと、ラドンややはりモスラの対決シーンがある映画が少しある程度。一方洋画はホラー映画・怪物映画ブームの時代に複数の有名モンスターが共演し、対決する映画が結構あります。ただ、名前を勝手にパクっただけなんて映画も少なくなく、今となっては好事家が失笑まじりで見るだけの中身でしかないのでなかなかDVD化されないのですが。手元の録画ものには「ドラキュラ対フランケンシュタイン」なんてのもありますが、フランケンシュタインの怪物が有名なデザインを使えないのに少しは近づけようと中途半端に努力したためにひどいブサイクなことや、ドラキュラがアフロヘアーで指輪からビームを出すところが強烈すぎて、こっそり「サンダ対ガイラ」のラス・タンブリンが出ている(らしい)ことを含めてあまり記憶に残したくない映画であります。そんな中、先日DVD化された映画は割と良かったので紹介。

ワルプルギスの夜、なんていうと今は別の物を連想する人が少なく無さそうですが、なぜかこのタイトルで呼ぶことが日本ではお約束となっている本作。原題はWEREWOLF VERSUS THE VAMPIRE WOMEN 有名怪物を使っているにも関わらず名前まではパクってないところに意気込みを感じます。魔女伝説を大学のレポートにするためにやってきた女子大生が、よせばいいのに墓暴きをした上に魔女〜実は吸血鬼〜と思われるミイラの胸にささっていた銀の十字架を引き抜き、さらにはその際にケガをしてミイラに自分の血をかけてしまう、なんていう誰がどう見ても"やっちゃいけない"行動を重ねたために案の定吸血鬼復活。哀れ女子大生は餌食となって吸血鬼の眷属に。それにつきあってやってきたもう一人の女子大生(恋人あり)といい仲になった狼男が自分の呪いに悩みつつ彼女を守るために吸血鬼と戦うというもの。最後は狼男に変身して、不死であるはずの吸血鬼をあっさりと倒すものの、その直後に先の女子大生が狼男の心臓を吸血鬼用の銀の十字架でブスリ、殺してしまいます。「これであなたも自由になれるわ」とか言って呪いから解放してやったような口ぶり。が、所謂"吊り橋効果"で吸血鬼の恐怖に怯えていたときは頼りになった狼男も、それさえなくなってしまえばただの怪物、もはや用済み。ましてこの時点で元々の恋人が迎えに来ていましたので、どう見ても元鞘に収まりたくて始末してしまったようにしか見えません。一番残酷なのは吸血鬼でも狼男でもなく一人の女でした、というオチ。
脚本のハシント・モリナは本作狼男役のポール・ナッチーと同一人物だそうです。ポール・ナッチーは本作同様脚本と狼男役を兼ねた映画数作に参加しておりまして、その中には吸血鬼ではなくズバリのドラキュラが出てくるのもありますが、その多くはあまり出来が良くないものだそうです。が、本作は怪物も登場人物も絞っており、本人による狼男の凶暴な演技もあって低予算ながらなかなか面白くしあがっておりました。ただし、画質はあきらかにVHSからのダビング(冒頭に米国の原盤なんて出てくるが嘘だ!)で最低レベル。ただし、死体の後に蛆がわいたりしている場面がありますので、あまり高画質で見たくない映画ではあるのですが。
日本ではあまり人気がある印象はありませんが、いわゆる三大怪物"ドラキュラ"、"狼男"、"フランケンシュタインの怪物"の中で、アメリカで人気があるのは狼男だそうです。他の二人と違って本来は普通の人間であり、それゆえに感情移入しやすいらしいんですね、あちらでは。
その割に登場作品は少な目ですが、その分他怪物と共演する話が多いですね。通常は人間なのでストーリーを作りやすい点や、対決の時に変身させることで視覚的にも変化をつけやすいなどがあげられると思います。狼男はいわば変身ヒーローのご先祖でもあるのです(日本でイマイチなのは変身ヒーローがいくらでもいる点もあるのかも)。おそらくその狼男の対決ものとなった最初の作品が「フランケンシュタインと狼男」。かの「狼男」、原題 THE WOLF MAN の直接の続編です。「狼男」は間違いなく画期的作品でした。狼男自体は世界各地に存在する伝説をベースにしているため、映画もそれ以前から存在するので必ずしも「狼男」が元祖ではないのですが、狼男自体を確立させたのが映画「狼男」なのは間違いない話です。なにせ「狼男は月夜に変身する」をはじめ、「狼男に噛まれたものは呪いによって狼男になる」「狼男は銀の武器を使わないと死なない」などの設定はこの映画のために脚本のカート・シオドマクが考え、採用したものであるからです。「フランケンシュタインと狼男」はその直接の続編で、ストーリーも続いています。ただ、格調高い演出がなされた前作と比べるとストーリーはあまり練られていない俗っぽいもので(俗編・・・なんちゃって)演出も登場人物の説明で進む部分が少なくない、いかにもB級という内容となっています。ただ、前作では抒情的に死に行く狼男が人間に戻っていくところだけが変身シーンとして描かれたのに対し(人間→狼男は足だけ)、本作では本来観客が見たがるであろう人間から狼男へ変身するシーンがちゃんと描かれています。もちろん少しずつメイクを施しては撮影する、を繰り返して少しずつ変身していくように見せているので、ふつうはカットごとのつなぎ目の間に顔の位置などが少しずつ異なるブレが存在するのですが、本作では大変丁寧に撮影されていてそのブレが少ないうえ、前作から引き続き狼男役のロイ・チェイニーJrの瞬きについ目が行ってしまう間に、まるで本当に変身していくような様が見事に描かれています。なお、前作では「秋の月」というセリフがあるだけだった狼男と月の関係が、「満月」に改められました。前作のように毎晩変身ではストーリーに支障があるためと、視覚的にわかりやすくするためでしょう。かくして多くの人が狼男のもっとも基本的な設定と認識している「狼男は満月の夜に変身する」は誕生したのです。
内容は、前作で死んだ狼男ことラリー(ローレンス)が、一緒に埋葬されたお宝目当ての泥棒に墓暴きをされた際に月明かりを浴びて復活するところから始まります。「ワルプルギスの夜」も似たような始まり方ですが、多分こちらのマネをしたのでしょう。復活したラリーの目的はふつうの死ねる人間に戻ること。その方法をもとめて前作から引き続き登場のジプシーに助力を求め、フランケンシュタイン博士に頼ることを勧められます。が、博士は死んでおり、代わりにその娘に助けを求めるというもの。肝心の怪物ですが、廃墟と化したフランケンシュタイン博士の家の地下でたまたま氷の向こうになにかありそうだと思ったラリーが掘ったところ、怪物が眠っていたのでなんとなく復活させてしまったというだけの存在です。ちなみに怪物を演じるのは「魔人ドラキュラ」のベラ・ルゴシ。もともとユニバーサル映画の、「フランケンシュタイン」での怪物役はベラ・ルゴシに依頼する予定だったのですが、ほとんどぬいぐるみのようなメイクや物言わぬ怪物役を嫌って役を断ったため、変わって抜擢されたポリス・カーロフの怪物で映画は大ヒットし、ポリスを一躍スターにのし上げました。正直この映画は原作「フランケンシュタイン」の原型をほとんとどめていませんがそのインパクトはすさまじく、のちのフラケンシュタインものは映画に限らず原作ではなくユニバーサル版「フランケンシュタイン」をたたき台にしているほどの、ある意味究極の原作クラッシュを果たしています。結局ベラはこの映画で怪物役を演じることになってしまいました。ストーリーは「フランケンシュタイン」とはつながっていないようですが、同じユニバーサルの製作だけに「フランケンシュタインの怪物と言えばアレ」のメイクは使用されています。
ストーリーに戻りましょう。発見された手記により、人造人間を作った時の「エネルギーを与える」装置を逆につなげば人間からエネルギーを抜くことができることを発見。最初からラリーをおっかけていた医師の協力のもと、装置の修復が行われます。が、フランケンシュタインの娘は医師に「怪物も破壊してほしい」と依頼、ラリーよりも先に怪物と装置をつなぎます。ところがこの医師は実はフランケンシュタイン博士を強く尊敬しており、「彼の創造物を破壊することはできない、最大限のパワーの怪物をみたい」などと血迷ったことを言い出して装置から怪物にパワーを送り込んでしまいます。本作の怪物は物言わぬ凶暴な性格なため、フルパワーになった途端大暴れ、医師を吹き飛ばし、娘を連れ去ろうとします。そこへ、満月の光に照らされて狼男に変身したラリーが襲い掛かり、怪物との激闘開始・・・が、ベラが怪物を終始肘が曲がらないように演じていたためにあまり格闘も派手にならず、もっぱら組み合って倒れ込むを繰り返すだけのもの。最後は怪物を恐れた麓に人々が上流のダムを破壊して屋敷もろとも水に沈めて終わり。悪い意味でものちのB級怪獣映画のお手本になったようです。

この映画のさらに続編に「フランケンシュタインの館」というのがありますが、これは無意味にドラキュラも登場するわ、またしても怪物や狼男は氷漬けになっているわ、戦わないわでもう一つ見るところがない作品。なお、「狼男」「フランケンシュタインと狼男」を含む計5作品で狼男を演じたロン・チャイニーJr最後の映画出演が「ドラキュラ対フランケンシュタイン」なんだそうです。
さて、来月はいよいよファンの間では「死の大カマキリ」の名で知られた THE DEAELY MANTIS が「極地からの怪物 大カマキリの脅威」の名で出るな・・・。フフフ、楽しみ。願わくば、VHSからのコピーでありませんように・・・。
