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Channel: 録画人間の末路 -
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放送通信連携システムの狙い

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先日、「スマートテレビ」の名を久々に見たとき、正直ウンザリとした気分しか出てきませんでした。だいぶ前に総務省サイトで見た議事録でのスマートテレビは「日本から国際標準を」と鼻息こそ荒いものの、その中身はといいますと「アプリがインストールできるテレビ」などという極めて安直なもの。こりゃダメだ、むしろ余計な機能なんかない画質に注力したテレビが欲しい(ある意味こっちの方がずっと"スマート")という感想を述べるにとどまっていました。

スマートテレビ標準化に向け「Hybridcast ver.1.0」公開
HTML5準拠/スマホ連携など。'13年末の実用化へ


だからこの記事も、まったく検証する気にならなかったんです。ですが、よく見ると発表は総務省やテレビ局のお偉いではなく、IPTVフォーラム。記事タイトルこそ"スマートテレビ"ですが、本文中ではあまり出てこず、リンク先のIPTVサイトでも"スマートテレビ"は語られていません。どうやらあくまでIPTVフォーラムからの提案であり、これが「日本のスマートテレビ」と決定したというわけではなさそうです。

それゆえか、データ配信にHTMLを採用しています。デジタル放送規格導入時はイケイケで、「デジタル放送ではパソコンは排除、触れさせない」「テレビの地上波放送が最も知識情報の頂点に立つ存在。だから何をしてもいい、民衆は結局これを選ぶ」と言わんばかりに好き勝手。データ放送もわざわざHTMLではなく、機能が劣って開発も期待できないBMLを採用しました。パソコン排除のためです。デジタル放送のデータ放送や双方向通信がろくに機能していない原因の一つがこのBML採用にあるのは明白ですから、今度の統合ではHTMLを使いましょうよ、と提案しているわけです。放送波に乗るわけではなく、あくまで放送とデータ配信を連動して行う技術の元でネットを通して別に配信されるわけだから放送にPCが入り込むわけではないということなのでしょう。
また、IPTVフォーラム提案ゆえの限界なのが、放送と連動同時にデータを別配信する技術にとどまっている点でしょう。本音を言えば、多分IPTVで地上波やBSの配信もしたいはずなんですよ。BSはともかく地上波は例によって「区域外放送を受信させない」が絶対なため、地上波放送局が許さないでしょう。BSをやらないのは、地上波をやらないのが不自然に見えるからだと思われます。

その他、細かいところで放送局やメーカーへの配慮もみられます。放送と配信を同時にすることで、"リアルタイム視聴"の価値を上げようとしているのもその一つです。最近、ちゃんとその番組が見たくて視聴する場合、その番組は録画してみるのが当たり前になってしまいました。原因としては
・テレビに時間と集中力を注ぎ込むほど暇じゃない、オンデマンド当たり前なライフスタイルの確立
・番組表から選ぶだけの簡単録画が当たり前。わざわざメディアを管理する必要がない
・リアルタイムでみるとCMのはさみ方がウザったい
などがあげられるでしょう。その傾向のために良い番組ほど視聴率が上がらず、逆にくだらなくてまじめに見る価値のない番組ほど「付けっぱなしながら見テレビ」の対象にされ、視聴率がそこそこ取れているという指摘がなされているくらいです。ところが、テレビ局は相変わらず"視聴率"しか番組を判断する基準を持っていませんし、持とうともしません。番組の質の低下の原因の一つでしょう。そこをデータ配信や書き込みを利用することでリアルタイム視聴の価値を高め、録画視聴を減らそうというわけです。テレビ画面内が番組やデータでゴチャゴチャすることで、今までより一回り大画面のテレビが欲しくなる効果もあるでしょう。その割に既存のテレビに対する技術要求がIPTV対応くらいしかないのは、日本ローカルのテレビなど開発する余力がメーカーにないことへの配慮でしょう。

もちろん最大の目的はIPTVの普及です。同法人サイトによるとIPTVは「初めて独り暮らしを始める子に進めたくなる話題のテレビ」だそうですが、わたしですら話題にあげたことなどこれが初めてという(笑)くらい存在感はありません。むしろアクトビラとかもっとTVとかサービス名の方がまだ知られてますねぇ、使われているかどうかは別にして。

さて、テレビ局や総務省は「スマートテレビ」をどう定義するのでしょうか。間違ってもわたしの提案する「スマートなテレビ」のようなものは採用されないでしょうが。
ただ、APPLEもGoogleもテレビに関してはうまい提案をしている、とはとても言えない状況なので、結局「外圧はない、余計なことをするカネなどない」で結局白紙になるかも知れません。そういう意味では最低限の注目くらいしてもいいかも知れないですね。

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