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Channel: 録画人間の末路 -
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新3D放送方式、AD3Dから受ける未来

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話自体は去年の11月のもののようですが、面白そうな情報を頂いたのでちょっと紹介します。

一般社団法人 電波産業会 講演会等開催案内

ARIBの略称の方が知られている、総務省やテレビ局と並んで日本の電波産業を牛耳るもう一つの組織、電波産業会の会員向けセミナーの案内の中に過去の資料が掲載されていますが、その中に
"第102回電波利用懇話会
「現行受信機(2D)と互換性のある3DTV放送技術について」"
という記事があります。おそらく「3Dテレビが売れるためにはソフトだけでなく放送も3D対応が必要」と言われていた頃から研究されていたものでしょう。なにせ先のオリンピックでも、3Dによるライブ放送が行われなかった先進国は日本くらい、と言われるほど諸外国では3Dも受け入れられているのに、日本ではごく一部がこっそりと録画放送されたくらいでまともなものは皆無。それくらい日本では3Dはダメなんです。ごく短期間で世界一無理のある地上デジタル放送への移行を促した反動は、テレビ市場の未来を徹底的にたたきつぶしたんです。
現在でもBS放送では3D放送が行われており、無料放送では風景や音楽が、有料放送ではおもにWOWOWとスターチャンネルで映画が3D放送になっています。いずれも放送形式はサイドバイサイドによる左右の目に見せる映像の両方を同時に画面に表示させるもっとも単純な方式です。が、3Dテレビを持っていない家庭や、番組はみたくても3Dで見たくない人にとって好ましい方式ではありませんでした。技術的には二分割させた片方を拡大させることでフルスクリーンにすることはもちろん可能でしょうが、水平解像度が半分になることを嫌ったのかそういう方面での展開は見られていません。いかなる方式をとろうとも"何か"が半分になることに変わりはないのですが、水平解像度は一番わかりやすいかも知れませんので。

そこで定義されようとしているのが、此度説明会に上がった3D放送方式

従来2D受信機と互換性のある
3D放送方式「Advanced Stereo 3D 」(PDF)


BDでは左目用(2D兼用)と右目用映像が別に収録され、3D化するときはそれを合成して表示させるものです。出力はテレビによってアクティブシャッター方式だったり偏光方式だったりで複数存在しますが、映像の記録としては同じです。放送でもそれをやろうと言うわけです。記録文章内では20Mbpsの放送ビットレートを13Mbpsと7Mbpsに分けることを提案しています。本当はH.264でビットレートを節約したいのでしょうが、地上デジタル放送を強引に普及させたためにテレビ市場の反動ダメージは深刻で回復の兆しがなく、このために買い換えの必要がある、などとしたら今度こそ日本のテレビは終わりです。なので、3D非対応テレビでも普通に映り、それでいてサイドバイサイドよりも高画質をと狙って提案されているのがAdvanced stereo 3Dです。あくまで資料を見た限りの推測ですが、おそらくマルチ放送を使うのではないか、と思われます。
現在でも日本放送協会のBS放送では、BS1を101と102に分け、101では約10〜12Mbps程度のHD放送を、102では6〜7MbpsによるSD放送という分割放送をたまに行っています(当ブログ記事参照)。それと同じことを3Dでは行う、例えば101では3D左目と2D専用の映像を送信し、102では3D専用の右目用映像を送信する。テレビが"マルチビューの3D放送"と判断したら101と102を合成して映像にする。3D放送と判断出来ない、あるいは右目用のH.264が使えない受信機(従来型)や、意図的に2D放送だけを受信したい場合は101だけを映像として表示する・・・。このような形をとれば比較的送信側の変更点は少なくて済みます。

ただ、気になる点がいくつか。
まず右目用映像をH.264で行うとしている点。左目用をMPEG2で行うとしているのは、3Dテレビを持たない従来の層でも受信出来るようにするためです。例え3D対応であってもテレビ自体がH.264の復号に対応しているのかどうか、甚だ疑問ではあります。「3Dテレビを持っているような連中は新方式になったらすぐ飛びつくような奴らだから、大丈夫」などと高をくくっていたらまた自爆物です。
第二に、あくまでわたしの推測からなんですが、マルチ放送を使った場合日本放送協会のようなもともとマルチ放送に対応している放送局、主に無料の放送局は問題ありませんが、WOWOWやスターチャンネルのような有料放送は導入が難しくなること。あれらはマルチではなく、複数のチャンネルを持っているだけですから。場合によっては2つのチャンネルを同時利用して(その場合両方MPEG2?)3D放送にするかも知れません。
第三に、すでに日本放送協会は13Mbps以下のHD放送を時折おこなっているにも関わらず、新方式だとその部分を「MPEG2-AD」と名付けている点。もっとも分割HD放送の画質の低下ぶりは誰しも認めるところなのでMPEG2でありながらより高圧縮で画質をキープしたがっているのは確かでしょうが。なんとなく圧縮エンジン開発の予算をARIBで集めた資金から提供しろ、と言っているようにも見えます。
最後に我々として気になる点ですが、もちろん録画の問題です。マルチチャンネル方式でも厳しいですが、またがり方式が仮に行われるとなると、ソフトウェアの大幅なバージョンアップが必要です。放送局は番組を録画されて保存されるのが嫌い(「放送は生で見るものです」「エアチェックする気をなくさせるのが目的」という迷言もありますし)なので日本放送協会などは全く気にしてないと思いますが。
なので、AD3Dの放送を楽しむとしたら、レコーダーの買い換えだけは必然になるでしょう。最近のほとんどのレコーダーはH.264のデコードが出来ますからAD3Dについて行けますし、すでに3D対応テレビを持っている人はむしろそちらで補完する形にしたほうが良いかも知れませんし。
どちらにしても、レコーダーは当分買わずに様子見した方がいいでしょうね、AD3Dを録画したいのならどうしても買い換えになるでしょうから。正直録画が面倒になる3D放送そのものには大した期待はしてません。が、こうした新3D対応テレビが当たり前になることでH.264/AVCデコーダー内蔵テレビが当たり前になり、H.264放送実現への足場が固まるかも知れません、AD3DにはH.264デコードが必須のようですから。わたしらが恩恵を受けるとしたら、その面が一番大きくなるでしょう。

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