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Channel: 録画人間の末路 -
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税務署のお仕事

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ある日、仕事中に電話がかかってきました。出てみると「わたくし、税務署の〇〇と申しますが・・・」基本的に怖いもの知らずで、特に電話口だとどこの誰だろうとひるむことはないわたしですが、税務署だけは別。毎月毎年税金を納めることは欠かさないわたし(当たり前だ)ですが、稀に納付を忘れて税務署から怒られる、とまではいかなくても注意勧告は受けることはあります。その時は当然平謝り。場合によってはそれだけでは済まずに追徴課税を受けたりして半泣きするはめに。当然今回もその類だと思ったわけですが。「実は、見て値段を査定していただきたい品物がありまして・・・。」とこう来ました。ああ、そっちか。以前は時々検察庁からこうした依頼はありました。ただ、ここ最近は一人で店をやっています。店を休んであちらへ出向き、打ち合わせをするわけにも行きませんし、まして休日をそちらで消化するのも・・・。と言うわけで断っていたので、問い合わせもなくなっていたんです。税務署も同じですが、もともと問い合わせの頻度は検察庁より少なかったのでわたしが基本引き受けなくなっているという情報が行っていなかったんでしょう。
k「うーん、わたし、一人で店をやっているので空けるわけにいかないんですよ」電「引き受けてくださるのならこちらからそちらへ伺って全部やりますよ」あら、こっちが動く必要ないんですか。k「ああ、それならやりますよ」電「そうですか、ありがとうございます」
と妙にうれしそう。しばらくして電話に出た税務署の職員、やってきました。いただいた名刺を見ると、税務署とは言っても出向扱いであり、肩書にあるのは国税局!。思ったより大きなところからの依頼でありました。当然品物の出どころに関しては詳しいことは教えてもらえないのですが、所謂「差し押さえ品」と思われます。雑談の中で言われたのが「他の店に問い合わせても引き受けてくれるところがなくなってしまった。数も減ってしまっているし、残っていても「責任負えないのでそういうことは引き受けられない」という断り方をしてくれるのはいい方、中には「そんなこと出来るわけないだろ!」と怒られたところもあった」と、散々な目にあったようです。なので断ることが多くなっていても、実績のある当店に問い合わせてみた、というところでしょうか。なるほど。最近また近所に増えてきて正直迷惑に思っている買取専門チェーン店とかじゃ絶対やらないでしょうし、その影響で店をたたんでしまった個人店は少なくないですからね。それにしても「責任負えない」という断り方はまぁわかりますが、怒ることはないだろうと思います。が、まぁ税務署・国税局だからなぁ。多分役所役人の中で一番嫌われているのが税務署関係でしょう。こちとら収入は増えないどころか減っているのに物価ばかり高くなって苦しい生活の中、それでも容赦なく取られるのが税金です。それでも違法行為はしたくないから納めているのに、連日必ず報道に出てくる税金の無駄遣いのニュース。そりゃ好感を持っていないどころか怒りを感じている人も多いでしょう。でも、税務の職員は徴収するのが仕事であって税金の使い道のほどんとは別の人が決めているので、税務署職員を責めるのは本来正しくないんですが、まぁ他に怒りの行き場がないですから。それに税務署職員が一見下手に出て親しげに接してくる行為というのは裏がある、と経験者は見ちゃいますし。特に相続税の時です。とにかく大量に雑談を仕掛けてくるんですが、それはすべて相続税の追加を行うための情報集めのため、こちらの口を軽くしようという企みでやってるんです。わたしなど最初からそれを承知の上でとにかく手っ取り早く終わらせようと話せることは全部話したつもりだったんですが、結果は同席してもらった会計士が「こんなのは初めて見た。ここまでしなくても・・・」と呆れるほど重箱の隅をつつくような項目まで要求されました。なんでも話すから何してもいいだろうと思われたみたいです。そういうわけでわたしも必ずしも税務署職員という人たちに好感は持っていないんですが、それと仕事はまた別の話。彼らの仕事をスムーズに進めてほしいとは思いますが、邪魔をしようとは思いません。なので電話口で応えた通りに引き受けることにしました。ただ、以前とは違ってただ査定をすればいいというものではなく、資料とするために一品一品に有識者としてレポートを書いてほしいとのこと。うわ、それは面倒くさい・・・と思ったものの今更嫌とも言えず。後日、再び同じ税務署職員がやってきました。今度は査定の品物を携えています。「先生、お願いします」と言われたので「ど~れ」と爪楊枝片手にのっしのっしと品物の前に鎮座するわたし。ちなみに爪楊枝はわたしにとって貴金属ものを触るときに必須の査定用アイテムです。一つ一つ見ては後のレポート用に普段書かないメモを取りつつ見ていくと・・・ああ、なるほど。税務署の職員とかじゃ手に負えないわけだ、という品物がありましたね。「ROLEXという表記が入っている腕時計」です。しかも、細部を見るとよくできています。ネットとかで書かれている「真贋の判断をプロはここを見て下す」みたいな箇所はほぼ全部丁寧に作ってあり、むしろ正規の品より芸が細かいくらいです。知識で判断を下すしかない人なら迷って当然でしょう。ただ、「迷う」ということはダメだということなんです。結局細部を知識通りに作ってダマそうと作り手が考えて作った品なので、その意志が全体に出て作りが下品になっているんですよ。だからいくら細部が良くても「迷う」んです。腕時計は伊達じゃない、作り手の心意気が反映されてる品物なんです。なのでここがいい、ここがダメだと知識を高めるより経験を積んで勘を磨き、勘で作りの良さを感じ取るのが一番確実なんです。その腕時計も細部を見ればどんなによくても全体を見れば明らかに品のない、自分は使いたくないと思う作りでしたね。何よりも決定的なところがダメでした。もちろんその決定的なところがどこかは言えませんし書けません。査定は大した時間もかからず終わったんですが、レポートを書くのに時間が掛かりました。それで報酬の話・・・となったんですが、今回はお断りしました。おそらくあちらにとっては一番の目玉となるだろう腕時計が値段の付かない品物であった以上、仮に他の品物が売れたとしても、本来の目的にお金を回せばわたしに報酬を払えるほど儲けが出るとはちょっと思えません。それでも支払うとなったら、相手は民間じゃありませんからその資金は税金ってことになります。税金の使い道を監視し、咎める立場にある納税者としては見ようによっては無駄遣いに見えてしまうそれは見逃せません。それに後の収支の報告が面倒になって納める税金が複雑になりかねませんしねぇ。こういう仕事を細々とやっていると税務署に思われて店の収入に関して重箱の隅をつつかれるのも嫌なので、だったら大したことはしていないし、もらわなくてもいい、ということにしておきました。確実に数万円単位で税務署に収入が入る品があるのなら別ですけど、今回は全体的に小粒でしたから。
と、いうわけで久々に公的機関からの依頼を終えました。「またお願いするかも」と言われましたが、あまり「あそこなら無料でなんでもやってくれる」という噂は署内でバラまかないでほしいなぁと思う今日この頃です。

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