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目撃した!GODZILLA2000

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このブログを始める前の話ですからかなり前のことになりますが、一時東京に住んでいた時に一度だけ、雑誌でゴジラ特集の編集と記事製作をやったことがあります。ただ、幼児向け雑誌のうえ増刊号の単発ものでしたのでできることは限られていましたが、嬉々としてやらせてもらいました。と、いうより、わたしが非正規ながら出入りしていたのでその編集部がゴジラ特集を企画した、の面もあったくらいです。特に印象に残っているのが東宝の広報の方が親切だったこと。別の会社の広報が出版社が大手か、そうでないかで露骨に態度を変えたのを目の当たりにしたこともあったため、より東宝の広報の親切ぶりが心に残っています。わたしが特撮ものについてあれこれ書くとき東宝系贔屓なのは作品が気に入っていることもありますが、この時の印象も大きいのです。その時もらった返却不要のプレスリリースなどの資料やコピーは今でもとってあり、時々取り出してニヤニヤしている宝物です。

そんな資料も大半は復刻させて付録として掲載している講談社のゴジラ全映画DVDコレクターズBOX(もちろん資料にこびりついた思い出の価値まで消すものではありませんが)。これがついに創刊当時のラインナップから一番注目していた「GODZILLA2000」(以下「2000」と表記)まで到着しました。当初の予想通り、中身は1999年に日本で公開された「ゴジラ2000ミレニアム」(以下「ミレニアム」)の海外公開版です。本家の東宝からはソフトが発売されていないためこれが初のDVD化であり、「怪獣王ゴジラ」(厳密に言えば海外版「GODZILLA KING OF THE MONSTERS!」の日本語字幕付きDVD)に続く二回目の同雑誌の快挙となります。
「2000」は例の1998年に作られて公開された「GODZILLA」の製作元であるトライスターによって主に北米で2000館以上もの規模で公開されました。確か当時の新聞に「それほどのヒットにはならかった。が、観客からは「これぞ本物」と喜ばれ、トライスター側としても元手が大してかかっていないので十分商売になった。」という感じで書かれていたように覚えています。ヒットしなかったのは、トライスター版の「GODZILLA」の評判が芳しくなく、観客はマニアが中心であったから、ではないかと推測されます。「2000」のWikipediaによると東宝が香港で吹き替えた別バージョンも存在するとありますが、出展はないため、少なくとも上映はトライスター版のみが行われたのでしょう。また、2000年11月には東京お台場限定で「2000」がデーブ・スペクター監修による字幕付きで特別上映されています。今回収録されたのはそれと同じもののようです。

一通り見てみましたが、「怪獣王ゴジラ」や「ゴジラ1985」、あるいはキングコング対ゴジラ」「モスラ対ゴジラ」のような追加シーンはなく、一部カットされた跡があるのみ。ほぼオリジナルの映像がそのまま使われた、とみてよさそうです。目立つカット部分は
・宇宙人がコンピューターにアクセスした際に残した"ミレニアム""支配""千年王国"と言ったメッセージを残した箇所
・篠田が「そう、リベンジだ・・・」とつぶやく箇所
でしょう。前者はメッセージの大半が日本語であることに加え、少々オカルトじみた演出になっているためにカットされたもの、後者は片桐が「今のゴジラが考えていることはただ一つ・・・」とつぶやく部分で「ゴジラのリベンジだ」と言わせてしまったが故のカットと思われます(わたしが字幕を書くのなら「ゴジラの逆襲だ」と言わせるところですが)。ただ、日本語の口パクに合わせて英語のセリフを作る以上、この程度の改編はやむを得ないところでしょう。むしろ感心したくらいです。アメリカ人は映画を字幕で見る習慣がないため、他国言語の映画の多くは吹替で行われますが、出演者の口の動きに対する配慮がないケースが多いらしく、いくつかのバカ映画で日本人が出てきたとき「口の動きと言葉があっていない」と揶揄されるケースを目撃しています。あまり言われませんが、映画の中の日本人のステレオタイプの描き方の一つとして考えられているのでしょう。それと比べると、出演者に配慮した改編になっていると言っていいでしょう。

解説によると、「2000」の目立つ変更は、カット編集よりもセリフの変更と音楽の差し替えにあるようです。そこを注意して鑑賞。セリフの変更で気になる部分をいくつか抜き出してみました
・序盤のパーティーシーンで、宮迫が片桐に報告する内容が「ミレニアム」のゴジラに関するものから海底で発見された隕石に関するものに
むしろ「ミレニアム」の海底から岩塊を引き上げる展開は唐突過ぎたくらいですから、先に説明があった方がむしろストーリーとしては正しいくらいでしょう

・ゴジラの東海村を狙った二度目の上陸シーンで自衛隊の隊長が作戦を説明するシーンで「ミレニアム」では「人員に被害が出たらなんにもならない」という質問に対して「その点は十分考慮してます」と答え、新兵器ブラストボムへの説明に入る箇所が、「危険が全くないとは言わないが200人や300人の犠牲は・・・」になり、ブラストボムが単なる機雷に
自衛隊としてはあり得ないセリフに差し替えられています。この時わたしは「シン・ゴジラ」ではわずかな逃げ遅れた人を目撃したため、ゴジラに対する攻撃が中止になり、変化したばかりで血まみれで弱弱しい第三段階のゴジラを取り逃がすシーンを思い出しました。おそらく「シン・ゴジラ」の庵野秀明・樋口真嗣両監督の少なくともどちらかは「2000」も観ていてもおかしくないでしょうから、そうしたトライスター版のセリフを否定したい気持ちがあったゆえの演出だったのかもしれません。

・ゴジラ細胞に存在する強力な再生能力が「ミレニアム」の"オルガナイザーG1"から"リジェネレーター(再生能力源)G1"、あるいは単に"G1"に
「ミレニアム」では取り出し可能な遺伝子かエキスの一種のように書かれていたオルガナイザーG1ですが、「2000」ではゴジラ固有の能力の一つとして書かれています。体内放射能との関係も示唆されています。

・G1によって体を手に入れた宇宙人(ミレニアン)が苦しむだし、姿が変わっていくことの説明がミレニアムの「オルガナイザーG1はゴジラ以外の生物は制御できないんだ」から「G1を使って大気に適合させている」に
宇宙人は地球の大気を自分らに合うように変えようとしている、の説明は「ミレニアム」でもありましたが、そこだけでそのあと全く出てこなかったのに対し、「2000」ではそれが生かされています。G1を制御できないのではなく、むしろ制御している、それは宇宙人は生存を優先して半ば自ら望んで怪獣化したようにも取れます。わたしは怪獣オルガを悲劇的な存在とみていましたが、「2000」を見るとまた印象が改まりそうです。

・ラストのセリフ、「科学の暴走が生んだゴジラ お前はなぜ現れるんだ?」「人間が生み出してしまった怪獣」から「科学者が生み出してしまった怪獣ゴジラ それ以来人間はゴジラを殺そうとして」「それなのにゴジラは地球を守ってる」に
急に第三者視点になった言葉にが出てくる「ミレニアム」に対し、「2000」はあくまでその世界にいる人間の言葉と差し替えになっています。特に昔のヒーローゴジラのような地球を守るゴジラ、と語られているのが興味深いでしょう。そう考えるとラストの大暴れも興奮と怒りに任せた破壊なのではなく、宇宙人の細胞や宇宙船の痕跡を根こそぎ破壊しつくそうとしての行動なのかもしれません。なお、「ゴジラは俺たちの中にいるんだ」につながるのは同じです。

細かい部分はいくらでもありますが、ストーリー上重要な部分はこのくらいでしょう。それまでの海外版ゴジラの改変と違い、これはこれで十分いいんじゃないかと思えてなりません。ただ、やはり自衛隊隊長の変更だけはいただけません。


音楽もかなり変更になっていますが、オリジナルをないがしろにしているわけではありません。が、「ミレニアム」のメインテーマの使用回数はかなり減り、目立たないものになっています。代わりに伊福部昭氏の曲が2つおそらく電子的にアレンジを加えて新たに流用されています。「ミレニアム」での流用シーンはゴジラの東京上陸と進撃シーンで、VSシリーズの時に使われた所謂「ゴジラのテーマ」が使われるのみですが、「2000」ではその曲がエンドロールにも使われ、先に言ったアレンジ2曲がクライマックス、ゴジラによって街が火の海に代わる箇所と、怪獣オルガがその姿を現す箇所に使われています。エンドロールによればその曲は「モスラ対ゴジラ」と「三大怪獣地球最大の決戦」からの流用とのこと。特にオルガ登場シーンの差し替えは、わたし個人的に非常に気に入りました。オルガもまたもう一匹のゴジラであることを音楽の面から語る、非常にマニアックな見事な使い方です。「ミレニアム」のラストバトルはどちらかと言えば悲しげな曲が中心でもう一つ盛り上がりにかけますが、こうした勇壮な曲ならもっとバトルを盛り上げることができたんじゃないでしょうか。


前にも書きましたが「ミレニアム」は宇宙人の下りがあまりにハマーフィルム・プロダクション製作の映画「火星人地球大襲撃」そのものすぎるため、個人的な評価は高くありません。ストーリーがイマイチは反面、特撮はなかなか充実していて、前年の「モスラ3 キングギドラ来襲」で本作のテスト的に特撮を担当した鈴木健二氏の少々大味ではありますが新世代を感じさせた合成は光る作品でした(最近ディアゴスティーニの「円谷プロ特撮ドラマDVD」で見た「恐竜大戦争アイゼンボーグ」の第2話のテラノとアイゼンボーグ号の空中戦が「モスラ3」のラストバトルとかなり似ていることに気が付く。参考にしたのかも)。「2000」を見ると、新たな可能性と見方に気が付いて、もう一度再評価したくなります。
「2000」の画質はやや残念。全体的に色味が少し赤くて暗く、特にクライマックスのバトルは暗すぎてPCのディスプレイとかだと何やってるか全くわかりません。目も疲れます。見るならテレビに接続してみましょう。
付録は、「2000」の海外資料とか当時の反応の記事なんかの収録を期待していたのですが、1984年にゴジラが復活する直前に行われた新作へ向けての復活祭として行われた「ゴジラ1983 復活フェスティバル」のパフレットやチラシが中心でした。少々残念。この「ゴジラ1983」も基本的に東京かその近郊に住んでいないと参加できないお祭りだったため、当時かなりくやしい思いをしました。一時的にですがわたしが東京に住んだのはそうした催しに参加したかったからです。イベントは東京だけで、の傾向はいまだに代わってないんですよね。

隔週刊 ゴジラ全映画DVDコレクターズBOX(43) 2018年3/6号【雑誌】講談社講談社

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