Quantcast
Channel: 録画人間の末路 -
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1580

有機ELテレビに感じたこと

$
0
0
テレビと言えば液晶テレビ。こういう状況が長く続いていました。かつては王者ブラウン管をはじめ、複数のテレビの表示規格が存在したものですが、全て姿を消しました。小型から超巨大まで賄える生産効率の良さ、消費電力の低さという点で液晶方式は他を頭一つ以上上回っており、特に日本においては「短期間で地上デジタル放送を普及させる」という使命もあって液晶以外が主力になる選択肢はなかったといっていいでしょう。しかし、ことテレビという動画を再生する表示機器において、画質面では液晶は数ある方式のなかでも劣った方式としか、未だに思えません。静止画を表示する方式としては優れていると思いますが、残像・遅延・程よいにじみがなくデジタルノイズが目立つ・立体感に欠けると言った欠点は、代用が利かない小型サイズならともかく本格的に映画などを楽しむには向いていないと、わたしは今でも思っています。いくら最新の技術を使い、表現力を高めても、"平面""絵の延長"にしか見えないのですよ。もはやこうした拘りを持つ人も少ないのかもしれませんが、一定数は存在すると思います。だからパナソニックは、新しい液晶テレビを出すごとに「プラズマを超えた」って言を必ず加えてますのだと思います。テレビとして使う分には液晶よりプラズマの方がいい、そういう声が絶えていない、ってことなんでしょうね。

そうしたわずかでもしぶとく残り続ける液晶への不満を持つ人が期待していたのが、有機EL方式のテレビでした。きわめて小型ですがソニーからテレビが発売され、その後もスマートフォンのような端末、携帯ゲーム機への採用と少しずつ広がり始め、かつての液晶に似た展開は明るい将来を予感させました。特にパナソニックとソニーの有機ELへの共同開発は大きな期待が寄せられたものです。しかし、はたから見る分には大した成果もなく終了、同じく有機EL開発が期待されていたジャパンディスプレイも業績不振で国産パネルの道は前進どころか後退した感が強くなりました。そのジャパンディスプレイですが、有機ELの製造を切り離して子会社化し、立て直すという話が出ていましたが、資金繰りなどの問題もあり、実行が二度にわたって延期されています。

ジャパンディスプレイ 有機ELの子会社化計画を再延期

もっとも、これによって「悪い材料は出尽くした」とでも思われたのか、はたまた大きな再建計画を期待してのことか、株価は上昇したようですが、それはさておき。

ですが、現在有機ELテレビは日本でも複数のメーカーから発売されています。数少ない海外メーカーであるLG電子が筆頭でしたが、すでに店頭ではそれ以外に東芝とソニーの有機ELテレビが並んでおり、今月中にはパナソニックからも発売されます。ただし、パネルは国産ではなく、LG電子のものが使われているようです。メイドインジャパンにこだわりたがる人も多いかと思いますが、優れた技術者がいたところで投資もされず、老朽化した設備しか持たない国内工場を拡張するより、積極的投資によって最新の設備を持ち、生産ラインをすでに軌道に乗せている海外工場のメーカーから買ってきた方が質の面でも上になるでしょうし。液晶パネルもそうなってますし、当面有機ELもそうなるしかないかと。55型以上の超大型で4Kしか実質ないのが有機ELテレビの欠点ではありますが、逆にそういうテレビが欲しいという人には有力な選択肢となります。
そのテレビ、やっと見る機会ができました。地元の量販店にLG電子に続いてようやくソニーの有機ELテレビが入荷していたのです。他の有機ELや液晶と同じ映像を流していてくれればもっとよかったのですが、映っていたのは専用のサンプルのみ。それだけに有機ELの利点とされる暗さを表現する映像のみでしたが、なかなか衝撃的でした。LG電子と違い、映された映像が、3Dでもないのに飛び出して見えるような錯覚を覚えたのです。テレビの画質にはそれなりにこだわりがある自負はあるわたしですが、画質において一番衝撃を受けたのはデジタル化の時でもHD化の時でも、まして4K化の時でもありません。ブラウン管テレビのフラットなものを見たときです。それまで膨らんで少し湾曲したブラウン管テレビを"普通"と感じていたわたしの目にはまるで抉れているかのように見えたのですが、まるで別次元の映像機器にも見えました。あれがテレビの画質、に何かを見始めたキッカケだったかと思いますが、フラットな有機ELテレビはその逆を体感させることによって当時の感覚さえ思い出させてくれるものでした。逆を言えば、少し映像の自己主張が強すぎ、液晶とは別の意味で離れたくなる感覚を覚えます。なるほど、LG電子が当初有機ELテレビを内側に湾曲させたものしか出さなかったわけです。強力な表現力によって立体的な圧迫感さえ感じる有機ELの画質を少し和らげるため、という理由もあったのでしょう。ただ、「湾曲=悪」のイメージは強く、もう作らないとのことですが。まぁあの圧迫感も慣れの問題だと思いますが、有機ELテレビを買うなら、液晶テレビだともう一回り大きなサイズが置ける部屋でないと当分厳しいでしょうね。それだけに、ますます通常大型サイズの有機ELテレビが早く出てくれるのが楽しみになってきました。究極の画質を噂されるクリスタルLEDもあるようですが、そんなもん待っていたらテレビなんかいつまでたっても買えませんし、それにクリスタルLEDの良さがはっきり分かるほどの映像ソースが普通に使われるようになるのはもっと先でしょうしね。とりあえずは液晶以外の選択肢である有機ELを見守ることにしましょう。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 1580

Trending Articles