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BLACKCASからの暗雲

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今でもこの話、あまり関わりたくは無いのですが、ちょっと事態が動きつつあるので少し書いておきましょう。

B―CASカード不正「きっちり処罰を」 民放連会長ら

この話、朝日は報道に熱心です。新聞系サイトで2回掲載したのは朝日新聞デジタルくらいなものでしょう。気を使っているのか「海賊版B-CASカード」と書くのみで、実際に売られている名称である「BLACKCASカード」の名は出していません。
本文中で「販売は不正競争防止法違反にあたり、利用者も損害賠償の対象になると捉えている」とありますが、逆を言えばそれくらいしか出来ない、ということでもあります。不正競争防止法、特に最近改定された条項に当てはまる可能性はありますが、国内でのやり取りを前提としているため、外国に販売元を抱えるBLACKCAS側へ打つ手はないでしょう。また、利用者は損害賠償の対象になると発言しているということは、つまり刑事罰で取り締まることが出来ないということ。損害賠償とは民事で扱うものであり、民事に警察は非介入の立場をとっています。つまり、カード購入者を特定するのに警察の手を借りることは出来ないため、事実上無理であるということです。ただ、なんとかして特定できる個人を探り当て、見せしめのために法外な損害賠償を要求するパフォーマンスくらいはやってくるかも知れません(だからかかわりたくないわけですが)。なお、朝日新聞でも同カードを取り寄せた(少なくとも使用させた)形跡がありますが、なかなか法案として提出されない「日本版フェアユース」では実験のためならばマスコミは逸脱した行動をしてもいいという前提ですので(個人は全般にわたって対象外)賠償請求の対象とはならないでしょう。現実的にはP2Pの監視を強化し、その特定者の中にBLACKCASカード利用者を見つけ次第大きく取り上げさせる、となると思っています。

このカード、一部では「B-CASの利権にメスを入れる存在となるのでは」という論もありますが、わたしはそんな楽観視していません。むしろ絶好の機会をB-CAS側に与えてしまったと思っています。実際、B-CAS側も略称であるB-CASではなく、ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズの名を使って行動を起こし始めています。これは、B-CAS本来の問題である規制や利権のためのカード悪用とBLACKCAS問題を切り離して論議させる、手回しを含めた準備が済んだからと思われます。ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ(わたしもこう書こう)という表記を使わせているのもその一環でしょう。B-CASとして表立つのではなく、むしろWOWOWやスカパー・スターチャンネルを矢面に立たせて裏にこもりつつも無視していないというアリバイ作りのために名前だけ出すあたりにビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ(ああ長い)の本気を感じます。
B-CASのシステムが海賊版に使われたという事実は、「B-CASを法律で保護し、利用者に罰則を与えよう」というビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ(もちろんコピペです)の従来からある身勝手な主張に正義を与えかねません。一度は消えかけたB-CAS保護法の復活がありうるのです。
ちなみにB-CAS保護法という法律も法案も存在しません。文化庁が著作権保護法の改定案のたたき台を発表したときに、DVDのアクセスコントロールやCPRMに関しての報告部分にどさくさにまぎれてB-CASを同様のものとして扱うように軽く触れてあったものを、わたしが大きく取り上げているだけのものです。ただ、この「軽く触れてある」というのはきわめてやっかいで、細かな規定がないということにつながります。つまり、「ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズの規定に従わないものは著作権保護法によって違法である」と、何に対しても宣言することが可能になってしまうのです。わたしはこれを恐れ、「B-CAS保護を法律に盛り込むのは特定企業の安泰や利益を法律で保護することにつながる」として反対してきました。が、現在「海賊版カードが存在する以上、そのスクランブル保護を法律に盛り込むのは合理的行為である」と言われたら反論は大変難しくなります。今のうちに考えておいたほうがいいのかも知れません。NTTくらい大きな企業なら法律でそのあり方に関して取り扱う必要もありますが、ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズはほとんどダミー企業に近い、事務所があるだけ、のものなので法律で具体的に定義するのはおそらく無理でしょう。
救いは省庁レベルで動いているのが総務省であり、文化庁ではなさそうという点です。なんだかんだ言っても総務省はちゃんと仕事しているので、そっちが動く限り文化庁案が再浮上ということは考えづらいです。ただ、海賊カードを錦の御旗にたて、総務省がまとめる前に法案が提出される、はあるかも知れませんが。

わたしたちは、触れてはいけないものに手を出してしまったのかも知れません。

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