頼んでおいたゴジラBDがようやく全部届きました。さすがに全種類を買った、というわけではないですよ。注文した数本のうち大半は昨日、一部は今日遅れて届いたという意味です。某所では見ながらの実況的に書きましたが、こっちでも書きましょう。
まずは何といっても「キングコング対ゴジラ」。もともとの映像を子供向け興業企画「東宝チャンピオンまつり」のためにオリジナルネガに直接はさみを入れて短縮版に編集された際にカットされたネガが紛失するという現代ではありえない事態が発生したため、ゴジラ映画史上最大の観客動員数を記録した作品にもかかわらずソフト化などでは扱いの悪い作品となっています。レーザーディスクの際にその一度紛失したオリジナルネガが発見され、「チャンピオンまつり」ネガと再編集されて復元版としてようやく全長リリース。ただ保存状態が違ったためにフィルムの色あせなどが目立つものになってしまっていましたが、デジタル技術が発達したためにDVD版ではその差が違和感ないレベルまで補正され、ようやく満足の行くものになりました。が、ここでなにか起こったのか、日本映画専門チャンネルで放送された「HDリマスター版」ではそのカットされた部分がDVDからアップコンバートしたものを貼りつけるという継ぎ接ぎ版になってしまいました。どうもまたしてもネガを紛失したらしいのです。それゆえに第一次BDではリリースされず、数年経ってようやく販売にこぎつけたものです。紛失した部分を補うため、海外版の「KING KONG VS GODZILLA」から使える部分を持ってきたものとのことです。ただ、海外版はチャンピオンまつり以上に切り貼りされていて、ドキュメンタリー番組風の別物となっていたので両方からカットされたものは使えず、そういう部分は仕方なくDVD用データのブローアップで補っているようです。ただ、そういう場面でもインターレースの日映専版よりはキレイに補正されていますし、特撮ではなく本編のシーンが大半ですので特撮映画としては致命傷とは言えないでしょう。特撮シーンも比較的短いカットのものが多いので、わたしみたいにそれを見つけるのが目的でもない限り見つけにくくなってはいます。その代りにLD以降差し替えになっていたステレオ音声版だけでなく、オリジナルのモノクロ音声が同時収録されたうえ、「チャンピオンまつり」版も同じBDで視聴できるようになっています。これはほかの「チャンピオンまつり」カット版が存在する作品も同一のようですが。1961版の「モスラ」も早く同じ仕様で出してほしいなぁ・・・。ひょっとしたら将来もう一度ネガが全部見つかって今以上の完全版が出るかも知れませんが、それでも現状ではできる限り最高の素材と技術を導入した「キングコング対ゴジラ」であることに違いはありません。マニアなら買って損はないでしょう。
ただ、個人的に「キングコング対ゴジラ」はあまり評価してない作品だったりする。だって、たとえばゴジラのアメリカ版がまもなく公開されますけど、あれがコメディ映画だったらどうします? 怒ると思うのです。「キングコング対ゴジラ」は超大物ゲストキングコングを使いながらコメディ映画となっているんです。多分アメリカのキングコングマニアには不評食らってもおかしくないかと。どういう評価だったか詳しいことは知りませんけど、まだ海外で評価が良かった、という文章を一度も読んだことがないのは確かです。悪評はありますよ、ちなみに。そういうわけでわたしもイマイチと評価しているのです。
キングコング対ゴジラ 【60周年記念版】 [Blu-ray]高島忠夫,藤木悠,有島一郎東宝
そして遅れて今日ようやく届いたのが「ゴジラの逆襲」。これは今回一番楽しみにしていたBDです。さっそく再生し、本編をすっ飛ばして特典映像を視聴しましょう。今回最大の目玉、それは「ゴジラの逆襲」の約一分の特報映像がついに発見され、収録されたことです。それにともない従来予告編代わりとして使われてきた「空の大怪獣ラドン」予告編の冒頭部分は収録されませんでしたが、もう代用品は不要でしょう。ただ、あくまで映像だけで音源までは発見されなかったらしく、メインテーマをBGMに本編の同様のシーンから音声を編集して収録した復元版なようですが、それでも素晴らしいものでした。まず冒頭で回転しながら「特報」の文字が出てきて、最後には
ゴールデンウイークを飾る
ゴジラの逆襲
麦笛
東宝系公開の2大傑作
の予告文字が表示されて終わりです「麦笛」は別に作られた映画で別に「ゴジラの逆襲」の同時上映というわけでもないようです。一見あとのシーンは本編から適当に構成されただけに見えますが、実際には未使用フィルムも使われています! 特にラスト大阪城にアンギラスが前足を手のようについて戦いの前に一部を壊してしまうシーンはあきらかにボツ映像でしょう。こんな貴重なものが今まで埋もれていたなんて・・・。これだけでも買ってよかったと思います。本編の画質は、やはり最新リマスター版「ゴジラ」などと比べると明らかに画質悪し。もともと「逆襲」は「ゴジラ」より感度の劣るフィルムで撮影したんじゃないかと思えてなりません。それでもDVDなどでは暗すぎてわからなかったゴジラやアンギラスの造形の細部がかなり見やすくなっていてたいしたものだと思います。
「キングコング対ゴジラ」はあまり評価していないと書いたわたしですが、逆に「ゴジラの逆襲」は高く評価しています。この作品によってようやく日本では"怪獣映画"というジャンルが確立したためです。じゃぁゴジラ第一作はどうなんだ、と聞かれるとあれは「ゴジラ」であってまだ"怪獣映画"とは呼べないものです。なにせゴジラに対して人間は完全な無力、全く戦いになっていないからです。実はゴジラが人間の兵器を破壊したシーンも全くないのですが、とにかく戦いになっていません。「ゴジラ」は怪獣映画以前のゴジラが登場する映画であり、当時としての現代に置き換えたおとぎ話です。中身は大戸島で語られるゴジラ伝説そのまま。時に現れるおそろしくでかい怪物、大暴れして人間を殺し続けるが誰もどうすることもできない。怒りを鎮めるには誰かをイケニエにして差し出すしかないという、日本のどこにあってもおかしくない怪物伝説の怪獣話、それが「ゴジラ」です。まぁ本来うら若き乙女と相場が決まっているイケニエがストーリーの都合上若き青年化学者になってしまっていますが。もうこんな映画は撮れないでしょう。何より無力さを引き出すためにみじめに敗北するなどという役割を自衛隊にもとめても協力してくれるわけがありません。「ゴジラ」は自衛隊発足直後1954年だからこそ撮影することができたのです。
一方、「ゴジラの逆襲」はクライマックス、人間がその兵器と作戦、そして勇気でゴジラと戦い、完全に倒せこそしなかったもののゴジラを封じ込めることに成功します。人間は怪獣と戦って勝利したのです。これ以降、巨大な怪獣の出現に対し人間が敢然と立ち向かう、人知を尽くし、壮絶な戦いを演じてなお一歩及ばないときに新たな希望が現れる、日本独自の「怪獣映画」というジャンルは「ゴジラの逆襲」があって初めて実現したのです。ただ、まだ創世記だけあって肝心のクライマックスの戦いが同じようなシーンの繰り返しが多すぎてやや退屈ではありますが、そこは怪獣映画ではありませんが「地球防衛軍」を持って完成の域に達します、ってのは前に書いたか。
ただ幻想映画から怪獣映画の橋渡しでもあった本作は、まだ犠牲となった小林という人物が登場します。おそらくサブカルチャー作品において、現代では揶揄の対象となった"死亡フラグ"をたてた最初の人だと思います。基本的にわたしはそういう決まり文句をもって揶揄するのは嫌いですけど、念のため。
ゴジラの逆襲 【60周年記念版】 [Blu-ray]小泉博,若山セツ子,笠間雪雄東宝
何度見直しても怪獣映画はいいものです。ただ、現在のように周辺がキナ臭くなっている状況では自衛隊も大手を振って娯楽に協力はしにくくなってしまっています。おそらく政情が安定しない限り、日本で大規模な怪獣映画が作られることはもうないでしょう。怪獣映画は日本の政治が安定していた時代の象徴となっていくかも知れません。
もうちょっとゴジラネタが続くかも知れませんが、勘弁を。
来月は東京いけることになりそう。GODZILLAも東京のいい劇場でみたいなぁ。
まずは何といっても「キングコング対ゴジラ」。もともとの映像を子供向け興業企画「東宝チャンピオンまつり」のためにオリジナルネガに直接はさみを入れて短縮版に編集された際にカットされたネガが紛失するという現代ではありえない事態が発生したため、ゴジラ映画史上最大の観客動員数を記録した作品にもかかわらずソフト化などでは扱いの悪い作品となっています。レーザーディスクの際にその一度紛失したオリジナルネガが発見され、「チャンピオンまつり」ネガと再編集されて復元版としてようやく全長リリース。ただ保存状態が違ったためにフィルムの色あせなどが目立つものになってしまっていましたが、デジタル技術が発達したためにDVD版ではその差が違和感ないレベルまで補正され、ようやく満足の行くものになりました。が、ここでなにか起こったのか、日本映画専門チャンネルで放送された「HDリマスター版」ではそのカットされた部分がDVDからアップコンバートしたものを貼りつけるという継ぎ接ぎ版になってしまいました。どうもまたしてもネガを紛失したらしいのです。それゆえに第一次BDではリリースされず、数年経ってようやく販売にこぎつけたものです。紛失した部分を補うため、海外版の「KING KONG VS GODZILLA」から使える部分を持ってきたものとのことです。ただ、海外版はチャンピオンまつり以上に切り貼りされていて、ドキュメンタリー番組風の別物となっていたので両方からカットされたものは使えず、そういう部分は仕方なくDVD用データのブローアップで補っているようです。ただ、そういう場面でもインターレースの日映専版よりはキレイに補正されていますし、特撮ではなく本編のシーンが大半ですので特撮映画としては致命傷とは言えないでしょう。特撮シーンも比較的短いカットのものが多いので、わたしみたいにそれを見つけるのが目的でもない限り見つけにくくなってはいます。その代りにLD以降差し替えになっていたステレオ音声版だけでなく、オリジナルのモノクロ音声が同時収録されたうえ、「チャンピオンまつり」版も同じBDで視聴できるようになっています。これはほかの「チャンピオンまつり」カット版が存在する作品も同一のようですが。1961版の「モスラ」も早く同じ仕様で出してほしいなぁ・・・。ひょっとしたら将来もう一度ネガが全部見つかって今以上の完全版が出るかも知れませんが、それでも現状ではできる限り最高の素材と技術を導入した「キングコング対ゴジラ」であることに違いはありません。マニアなら買って損はないでしょう。
ただ、個人的に「キングコング対ゴジラ」はあまり評価してない作品だったりする。だって、たとえばゴジラのアメリカ版がまもなく公開されますけど、あれがコメディ映画だったらどうします? 怒ると思うのです。「キングコング対ゴジラ」は超大物ゲストキングコングを使いながらコメディ映画となっているんです。多分アメリカのキングコングマニアには不評食らってもおかしくないかと。どういう評価だったか詳しいことは知りませんけど、まだ海外で評価が良かった、という文章を一度も読んだことがないのは確かです。悪評はありますよ、ちなみに。そういうわけでわたしもイマイチと評価しているのです。

そして遅れて今日ようやく届いたのが「ゴジラの逆襲」。これは今回一番楽しみにしていたBDです。さっそく再生し、本編をすっ飛ばして特典映像を視聴しましょう。今回最大の目玉、それは「ゴジラの逆襲」の約一分の特報映像がついに発見され、収録されたことです。それにともない従来予告編代わりとして使われてきた「空の大怪獣ラドン」予告編の冒頭部分は収録されませんでしたが、もう代用品は不要でしょう。ただ、あくまで映像だけで音源までは発見されなかったらしく、メインテーマをBGMに本編の同様のシーンから音声を編集して収録した復元版なようですが、それでも素晴らしいものでした。まず冒頭で回転しながら「特報」の文字が出てきて、最後には
ゴールデンウイークを飾る
ゴジラの逆襲
麦笛
東宝系公開の2大傑作
の予告文字が表示されて終わりです「麦笛」は別に作られた映画で別に「ゴジラの逆襲」の同時上映というわけでもないようです。一見あとのシーンは本編から適当に構成されただけに見えますが、実際には未使用フィルムも使われています! 特にラスト大阪城にアンギラスが前足を手のようについて戦いの前に一部を壊してしまうシーンはあきらかにボツ映像でしょう。こんな貴重なものが今まで埋もれていたなんて・・・。これだけでも買ってよかったと思います。本編の画質は、やはり最新リマスター版「ゴジラ」などと比べると明らかに画質悪し。もともと「逆襲」は「ゴジラ」より感度の劣るフィルムで撮影したんじゃないかと思えてなりません。それでもDVDなどでは暗すぎてわからなかったゴジラやアンギラスの造形の細部がかなり見やすくなっていてたいしたものだと思います。
「キングコング対ゴジラ」はあまり評価していないと書いたわたしですが、逆に「ゴジラの逆襲」は高く評価しています。この作品によってようやく日本では"怪獣映画"というジャンルが確立したためです。じゃぁゴジラ第一作はどうなんだ、と聞かれるとあれは「ゴジラ」であってまだ"怪獣映画"とは呼べないものです。なにせゴジラに対して人間は完全な無力、全く戦いになっていないからです。実はゴジラが人間の兵器を破壊したシーンも全くないのですが、とにかく戦いになっていません。「ゴジラ」は怪獣映画以前のゴジラが登場する映画であり、当時としての現代に置き換えたおとぎ話です。中身は大戸島で語られるゴジラ伝説そのまま。時に現れるおそろしくでかい怪物、大暴れして人間を殺し続けるが誰もどうすることもできない。怒りを鎮めるには誰かをイケニエにして差し出すしかないという、日本のどこにあってもおかしくない怪物伝説の怪獣話、それが「ゴジラ」です。まぁ本来うら若き乙女と相場が決まっているイケニエがストーリーの都合上若き青年化学者になってしまっていますが。もうこんな映画は撮れないでしょう。何より無力さを引き出すためにみじめに敗北するなどという役割を自衛隊にもとめても協力してくれるわけがありません。「ゴジラ」は自衛隊発足直後1954年だからこそ撮影することができたのです。
一方、「ゴジラの逆襲」はクライマックス、人間がその兵器と作戦、そして勇気でゴジラと戦い、完全に倒せこそしなかったもののゴジラを封じ込めることに成功します。人間は怪獣と戦って勝利したのです。これ以降、巨大な怪獣の出現に対し人間が敢然と立ち向かう、人知を尽くし、壮絶な戦いを演じてなお一歩及ばないときに新たな希望が現れる、日本独自の「怪獣映画」というジャンルは「ゴジラの逆襲」があって初めて実現したのです。ただ、まだ創世記だけあって肝心のクライマックスの戦いが同じようなシーンの繰り返しが多すぎてやや退屈ではありますが、そこは怪獣映画ではありませんが「地球防衛軍」を持って完成の域に達します、ってのは前に書いたか。
ただ幻想映画から怪獣映画の橋渡しでもあった本作は、まだ犠牲となった小林という人物が登場します。おそらくサブカルチャー作品において、現代では揶揄の対象となった"死亡フラグ"をたてた最初の人だと思います。基本的にわたしはそういう決まり文句をもって揶揄するのは嫌いですけど、念のため。

何度見直しても怪獣映画はいいものです。ただ、現在のように周辺がキナ臭くなっている状況では自衛隊も大手を振って娯楽に協力はしにくくなってしまっています。おそらく政情が安定しない限り、日本で大規模な怪獣映画が作られることはもうないでしょう。怪獣映画は日本の政治が安定していた時代の象徴となっていくかも知れません。
もうちょっとゴジラネタが続くかも知れませんが、勘弁を。
来月は東京いけることになりそう。GODZILLAも東京のいい劇場でみたいなぁ。