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Channel: 録画人間の末路 -
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新作アメリカ版GODZILLAの期待と不安

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衛星放送で"地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン"を見る。うーん、こいつはHDだといろいろ厳しいなぁ。だって、"ゴジラ"第1作だと「うお、ぬいぐるみの傷まで見えるよ」なのに、"対ガイガン"だと「あちゃー、ぬいぐるみの傷まで見えちゃってるよ」になってしまうので。本作に登場するゴジラおよびキングギドラのぬいぐるみはメインとして通算4作目の登場にして使いまわしとなってしまっているため、痛みがかなり激しい。キングギドラは一番目立つ頭部と羽だけ作り直しているのでなんとかなっている(そのため、5作目の使いまわしとしてテレビ"流星人間ゾーン"にも登場するはめに)が、ゴジラはそれができないので本当にボロボロ。表皮の凹凸が撮れかかってい垂れ下がっているし、右の脇の下など剥げて下地が露出しているようにさえ見える。正直保存状態で言えば海用に切って使った"怪獣島の決戦 ゴジラの息子"版のゴジラのほうがマシだったんじゃないかとさえ思うのだが、あれはミニラの対比のためにもっと背の高い人が入るために作られているので本作が最後の出演となったゴジラ役の中島春雄氏には大きすぎる(実際格闘シーンは交代で入っているが足元が弛んでいる)ので結局総進撃ゴジラをまた使うハメになったのかも。ただ、そういう傷がはっきり見えるということは丁寧にHDリマスターされたという証拠。一部の心無いファンからは「ガイガンだけを褒めておくのが通の証」とばかりに揶揄を受けるだけ扱いになっているだけに、初期作品と比べると手抜きでもおかしくないのに、それが無いがうれしい。感心します。
"対ガイガン"の揶揄の一つが怪獣の吹き出し表現だが、タイトルロールが終わると同時にマンガのコマのアップからストーリーが始まるように本作は積極的にマンガ表現を作中に取り入れようとした節がある。前作「ゴジラ対ヘドラ」がアニメ表現を使っていたため、今度はマンガでやろうという意図があったのかも。主人公がマンガ家ということもあって作中はマンガが重要な役割を果たすが、その画を誰が書いたのかいまだに不明。DVDのオーディオコンタリーでも「美術スタッフのだれかではないか」程度にしか書かれていない。ただ、コメンタリーの語り手が作品のスタッフではなく、たんにリアルタイムで見ていたというだけの樋口真嗣監督ではそこまで分からなくてもしょうがないか。そのせいでDVDのオーディオコメンタリーは同氏の特撮オタトークに終始しているんだけど、ツッコミどころがやたらわたしとカブるので嫌になる。もっとも、コメンタリーの内容からして10年前、2003年ころ録音されたものなので今は多少違うかも。なにせガイガンのデザインを手がけた人を東宝が認知したのは2008年と最近のことで、それまでは説がいくつか飛び交っていただけだったのだから、資料もあいまいなものしか手元になかったのだろう。作中に登場するイラストだけの怪獣、シュクラとママゴン(モデル?は"ウルトラセブン"のアンヌ隊員でおなじみひし美ゆり子氏)の画からするとプロのイラストレーターの仕事であることは間違いないので、ガイガンデザイナーにしてイラストレーターの水氣隆義氏の画の可能性もあるけど不明。BDでははっきりさせておいてほしいなぁと。

地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン 【60周年記念版】 [Blu-ray]石川博,菱見百合子,梅田智子東宝

さて、いよいよ新作のアメリカ版"GODZILLA"の日本国内公開の前売り券が発売された。わたしの行動範囲の劇場でも発売を開始したので特典欲しさに買いに行こうかな。正直残像だらけのあの劇場でリミテッドアニメ以外の作品はあまり観たくないのだけど、東京行ったときにもまた見直せばいいか。
その新作GODZILLAだけど、まだ憶測が飛び交っている段階で中身は見えてこない。現在公開されている予告編ではその破壊力は、踏み潰しや通り抜け、潜航波による津波のように単にゴジラが巨大であるがゆえに行動が破壊につながってしまうというものでしかない。日本でのゴジラはああいう表現はされなかった(ラドン・モスラはそういう破壊が主だった)ので、ひょっとしたら多くの人が期待している「日本のゴジラそのものがハリウッドのVFXで表現される」には多分ならないだろうな、と考えている。もちろんそればかりにはならないだろうけど、己の破壊による炎でますます怒り狂うような理不尽な破壊活動や、軍を一撃で葬り去るような絶大なパワーとまではいかないだろう。
一番期待と不安が入り混じっているのが、予告編でもある降下部隊の行動だ。怪獣と降下部隊。わたしはどうしてもトライスター版GODZILLA便乗映画であった"怪獣大決戦ヤンガリー"の似た場面を思い出してしまう。韓国人監督、シム・ヒョンレによってつくられた韓米合作映画扱いの同作、なぜか韓国は作中に全く登場せず舞台も軍もアメリカな同作。その米軍の繰り出すヘリコプター、戦闘機の攻撃とものともせず、逆に口から吐く火球でそれらを撃ち落としてしまう怪獣ヤンガリーに対し、軍は何を思ったか腰に妙な飛行用ロケットを取り付けた降下部隊に銃を持たせ、接近戦をしかけるのである。ミサイルの直撃にも耐える怪獣に人間が手で持てるような武器が効くわけないし、高速飛行する戦闘機を撃ち落とすほど命中率の高い飛び道具を相手に接近戦を挑むというのがそもそも正気の沙汰ではない。ヤンガリーは頭部にあるコントロール装置で宇宙人に操られているのでピンポイントでそこを狙うのが目的なら間違ってもいないのだが、この作戦が実行された時点でそれは全く分かっていない話だしなぁ。VFXはアメリカに発注したCGによってなされているけど、半透明でテクスチャ貼り忘れたんじゃないかと言う出来で正直しょぼいが、ミサイルで簡単にやられ、敵怪獣とのバトルもないトラゴジよりは怪獣映画らしい見せ場はあると言えなくもなかった。今回のGODZILLAの監督さんは低予算映画出身の人なのでちょっとだけそっちに転ばないかどうか気がかり。
ちなみに"ヤンガリー"のシム・ヒョンレ監督、2007年に今度は"DーWARS"をやっぱりアメリカに発注する形で製作、再び怪獣映画に挑戦する。今度はまともなところにVFXを頼むことができたのか、ヤンガリーとは比較にならないほど完成度の高いVFXが展開するが、今度は少し韓国に触れたもののやっぱり舞台はアメリカで怪獣軍団にボコボコにやられるのもアメリカ軍。例え怪獣が相手であろうとも最強なのはアメリカ軍で、苦戦をしても必ず勝つ、というのはアメリカの映画における普遍の鉄則である("パシフィック・リム"ですら米軍はKAIJUUを倒してこそすれ負けてはいない)。それを曲げたらダメだろ、おまけに出来はそう悪くないとはいえ、どこかで見たようなシーンの連続するB級の内容にもかかわらず超大作扱いの宣伝活動と劇場数を確保、そりゃ酷評が集まるわな。それでも日米英以外で現代が舞台の巨大怪獣映画を製作した監督は珍しい。ぜひ次も挑戦してもらいたい。

少々脱線したけど、GODZILLAは間違いなく楽しみにしている映画。今のところトライスターの時のような余計な先入観が世間を蔓延していないのが幸いだが、日本の東宝も重い腰を上げるにはヒットしたほうがいいのか、前回のようにイマイチに終わった方がいいのか悩むところ。とりあえずわたしは最低二回観る。

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