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Channel: 録画人間の末路 -
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同業マンガを読むのは難しい

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テーマが質屋なマンガが出ていたので、買ってきました。

いろは坂、上がってすぐ。(1) (ヤングガンガンコミックス)勇人スクウェア・エニックス

質屋、それは日本の中古取り扱いの本質にして原点。シャーロック・ホームズの小説の中でも出てきたことがあるように、他国にも存在しますが、日本以外の国ではあまりまっとうな商売とされていないことが多いと聞いています。時代に合わせて大きく変わったり、あるいは全く変わらないことで、街の一部であり続けられるのは日本くらいらしいですね。

ほぼ同業としては気になるところなので読みたくなったのですが・・・。うーん、予想はしてましたが、やっぱりのめり込めません。内容はファンタジーなんですが、その部分より仕事の方が気になって、登場人物の気持ちと同化出来ないんです。
特に第一話。訪ねてくるお客さんは、店から見れば非常に典型的な「嫌なお客」として書かれています。

・質屋でいきなり「買い取って」と言う
看板に"質・買い取り"と書いてある質屋さんならいいんですが、そうでない質屋さんでこれを開口一番言うのは望ましいことではありません。つまり、質屋は買い取り屋ではないからです。消費者金融が普及して質屋を金融として利用する人が少なくなり、3ヶ月たって取り戻す権利がなくなる(質流れと言います)ことを最初から前提として要らない物を現金化したいだけの人が増えたため、質とは別に買い取りをやるようになった店が大半になった、というだけの話です。マンガの中にも説明がありますが、あまり生々しくしたくないのか、取り戻す際に利息が必要になることを書いてませんでしたね。

・「相場は知っている」と半分脅してくる
素人の言う相場は、玄人から見れば"希望小売価格"に等しいものです。状態にもよりますし、高級な腕時計だとメンテナンスが必要になる場合もあり、その分査定金額も下がります。さらにマンガで描かれたお客は女性でした。男性物を女性が付ける場合ブレスレットのコマを外して短くするケースが多く、その分安くなったりもするからです。
中古屋を確実に怒らせる言葉を教えましょう、「前にヤフオクで同じやつが○○円で出ていた」。仮に顔で笑っていても、腹の中では間違いなく怒りを覚えます。「じゃああなたもそこで売ればいいじゃないですか、その値段で」と、もう査定すらしてもらえなくなる場合すらあります。それを"相場"と言い張って、値上げ交渉の材料にしようとする人は存在しますが、間違いなくマイナス効果しかないです。

そこがしっかり描かれているので、クライマックスのファンタジー展開が浮いて見えてしまいました。あまりにつながりがなさ過ぎて一本のマンガとして読めないわけです。第一話で主人公の女の子は嫌なお客が持ち込んだ腕時計をロクに見ず、触った瞬間に「0円」と判断しますが、ああやっぱりニセモノなんだな、と考えてしまいましたし。よほど高品質なものでない限り、ロレックス(と、書き文字のセリフにありましたが)は本物かニセ物か、さわった瞬間にだいたいわかりますので、即0円と判断することは別に不自然でも何でもないのです、査定する際にうつろな表情になってましたし。それにストーリーの上でもニセモノでも全く問題ないどころか、「思い出はお金じゃない」っていうシメにした方がいいくらいに思えるわけです。ページの都合か何かで省略されたのかも知れません。

ただ、質屋しているところはそこだけでした。他はそういう同業者が見てリアリティーを感じるような内容でも展開でもありませんでしたし、全く商売していない話もあります。多分第二話以降は、よりファンタジーとして読んでもらえるよう路線を修正したのではないか、と思われます。雑誌で個別に読む分には良かったのかも知れませんが、単行本となっったら必ず最初は第一話から読むので、そこで躓いてしまいます。結局第二話以降も乗ることが出来ず、わたしが読むにはちょっと残念な内容でした。

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