一部の人からはすでに記憶の彼方だったりすると思いますので、今年の公開だったことが驚く作品、それが「大怪獣のあとしまつ」です。その後似た題材を取り扱って公開された「シン・ウルトラマン」が大のつくヒットなのが信じられないほど酷評の対象だった「大怪獣のあとしまつ」ですが、だからこそなのか。もったいぶった期間を空けず、さっさと円盤化されました。
大怪獣のあとしまつ 豪華版 [Blu-ray]豪華版ブルーレイ山田涼介TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D) ちょっと驚いたのが東映からの販売だったこと。製作自体は東映と松竹の共同だったので松竹から出てもおかしくなかったのですが、東映でした。まぁ三木監督の最初の企画は仮面ライダーものだったそうなので東映が主体が筋なのですが。なんで東映から出ると驚きかというと、わたしが知る限り東映から出た初の怪獣映画の円盤だからです。基本的に東映っていわゆる怪獣映画を作ったことがないんです。前に各社怪獣映画特集、てなものを衛星放送かどこかでやった時、松竹は「宇宙怪獣ギララ」、日活は「大巨獣ガッパ」だったのに東映は「怪竜大決戦」でしたし。名前も出てくる巨大生物もまぁ怪獣っちゃぁ怪獣でしたが、作中の扱いは忍者が変化した怪物だったので怪獣とはいいがたい扱いだったのですよ。王道怪獣映画をやらないのは、おそらく東宝との差別化だと思います。だからこそ「大怪獣のあとしまつ」は松竹の共同製作だったのだろうな、と考えていたので東映からの円盤発売はちょっと意外でした。
さて、マニアのたしなみとして買わずにはいられなかった本作、もちろん豪華版のBDです。だからと言ってすぐにワクワクとした思いで見ようという気にはなりません。まだ思い出にするにはインパクトが強烈すぎました。もちろん悪い意味で、が大きいのですが。「シン・ウルトラマン」はそろそろ手元に置いて別の見方で鑑賞したいかな、と思うのですが。なのでこのBDを買い、まっさきに再生しようと思ったのがオーディオコメンタリーです。少なくとも日本の映画のDVDなりBDだとたいていこのオーディオコメンタリーってやつ、ついてくるんですが、円盤買ったはいいけどオーディオコメンタリーなんて全然聞いていない作品がほとんど、と言う人が大半でしょう。かく言うわたしもわざわざ聞くことは少ないんです。自由に話させるとあさっての方向にいくこともありますし(オーディオコメンタリー付き始めのころの作品、「ゴジラ2000ミレニアム」では佐野史郎氏が暴走していることで一部の間で有名。それ以降は東宝では必ず進行役が付くことになったとか)、俳優さんならともかくスタッフがしゃべっているやつだとチークの専門家じゃないのでグダグダになりがちなですし。ただ、本作の場合あの酷評を現場の人はどう思っているか、それをおそらくは腹の中に踏まえた上で本作について何をしゃべるのか、ぜひ聞いてみたかったんですよ。豪華版のせいか本作のオーディオコメンタリーは2種類もついており、一つは監督と俳優、もう一つは監督と特撮やVFXスタッフによるものです。わたしはもちろんためらわず後者を選びました。
序盤、参加者の紹介系のトークで始まり・・・。全然本編と連動しない好き勝手なおしゃべりが続きます。まぁゴ作品の権利を持つ大手映画会社(途中からは東宝と言ってましたが)に怪獣の粘土模型を持ち込んで大丈夫かどうか見てもらったとかまぁその手の話なら作品に関係があるのでまだ良いんですが全く関係のない話が長く、一度は映像無視したおしゃべりコーナーになっちゃてるんだな、という覚悟で見ていたんですが、怪獣が姿を現すあたりでやっと映像関連を解説しながらのトークになって一安心。コロナウィルスの影響もあってスタジオが自由に使えず、怪獣シーンの大半はモデルを取り込んで加工したCGになっていますが、もともとは巨大ミニチュアメインに使って撮影するつもりだったせいもあってそこらへんに関する話が多くて良好。足を上げているのは鳥が死ぬとき足を上げているイメージがあるからで、今回の怪獣は恐竜ベースで恐竜は鳥の子孫だから鳥っぽい死に方をするだろう・・・ということだそうです。ただ、単純にポスターにしたときにオブジェっぽくなるからとも語っていたのでそちらがメインだと思いますが。ちなみにポーズのイメージはカトちゃんこと加藤茶氏の往年のギャグ、「ちょっとだけよ」だそうです。やはり本作がグダグダになった原因の一つはコロナウィルスによって思う存分撮影ができなかったから、というのはあるようですね。本来ならもっとCGではなく特撮技術を使って撮影を行いたかったようです。少なくとも参加した特撮スタッフは、もう二度とできないと思っていた昔の特撮技術や特攻技術を使って撮影ができる、とかなり意気込んで参加していたようですね。ただ、それだけに参加者が久々に仕事をするベテランが多かったんでしょう。怪獣造形の若狭新一氏だって怪獣は「ゴジラ FINAL WARS」依頼17年ぶりだったようですし、何よりこの人、1977年の「大鉄人17」とかに戦闘員役として出演してますから年齢もかなり・・・。また、本編特殊効果では、それこそ何十年ぶりくらいにコンクリート素材を混ぜた東映らしい爆発が行われ(よくわからない人はYouTubeの東映の公式チャンネルで「仮面ライダーV3」のオープニング部分とか見てください。爆発をバックにバイク走らせてるだけなんですが、それだけでオープニングを成立させているくらい爆発と混ぜたコンクリート素材がいい仕事してます)、それはいいんですが、そのために1975年の「秘密戦隊ゴレンジャー」の撮影経験のある人にやってもらった、などの話も聞けます。つまりベテラン、かなり年配の方が多く参加した現場だったようです。彼らは独自のこだわりもあったでしょうからそれをまとめるだけでも結構苦労があったでしょうね。特撮とVFXのバランスが予定通りに行っていればもうワンランク上のクオリティは出せたんじゃないかなぁと撮影時期が悪かったことを思わせてくれます。まぁ本編のグダりぶりはそれとは別だと思いますが。豪華版だけに特典ディスク(BDを買ったのに特典はDVD。まぁ使いやすくていいけど)が付いていて、当然特撮のメイキングを期待してみたのに、ほとんどが本編で残念。東宝だとほとんど特撮シーンのメイキングしか使わないのでそこらへんは制作会社の方向性の違いもあるんでしょうし、本編俳優のファンならあれでいいのでしょうが、"買う"って人が求めるものはまた違うので。そしてもう一つ、決定的に残念だったのは、どうやら酷評された原因を「真面目な作品だと思って見に来た人が多いから」としていたこと。おそらく制作側の公式見解としてそういうことにしよう、と決まっていたのだと思います。少なくともわたしは公開前からコメディだと思って見に行きましたし、分野を非難する気は全くありません。ギャグの方向がブレまくりだったことと、クライマックスとラストカットが許せなかっただけです。こういうすれ違いを意図的に定義しようとしている以上、東映や松竹の怪獣ものは当分無理だな・・・と感じてしまいます。だからこそ東宝の次回作には期待したところなんですが、またコロナウィルスが猛威を振るいだしたからなぁ。東宝としてはどうしても2024年に公開したいでしょうからなんとか頑張って仕上げてほしいと思う今日この頃です。
![大怪獣のあとしまつ 豪華版 [Blu-ray]](http://m.media-amazon.com/images/I/51JBjfrT4ML._SL160_.jpg)
さて、マニアのたしなみとして買わずにはいられなかった本作、もちろん豪華版のBDです。だからと言ってすぐにワクワクとした思いで見ようという気にはなりません。まだ思い出にするにはインパクトが強烈すぎました。もちろん悪い意味で、が大きいのですが。「シン・ウルトラマン」はそろそろ手元に置いて別の見方で鑑賞したいかな、と思うのですが。なのでこのBDを買い、まっさきに再生しようと思ったのがオーディオコメンタリーです。少なくとも日本の映画のDVDなりBDだとたいていこのオーディオコメンタリーってやつ、ついてくるんですが、円盤買ったはいいけどオーディオコメンタリーなんて全然聞いていない作品がほとんど、と言う人が大半でしょう。かく言うわたしもわざわざ聞くことは少ないんです。自由に話させるとあさっての方向にいくこともありますし(オーディオコメンタリー付き始めのころの作品、「ゴジラ2000ミレニアム」では佐野史郎氏が暴走していることで一部の間で有名。それ以降は東宝では必ず進行役が付くことになったとか)、俳優さんならともかくスタッフがしゃべっているやつだとチークの専門家じゃないのでグダグダになりがちなですし。ただ、本作の場合あの酷評を現場の人はどう思っているか、それをおそらくは腹の中に踏まえた上で本作について何をしゃべるのか、ぜひ聞いてみたかったんですよ。豪華版のせいか本作のオーディオコメンタリーは2種類もついており、一つは監督と俳優、もう一つは監督と特撮やVFXスタッフによるものです。わたしはもちろんためらわず後者を選びました。
序盤、参加者の紹介系のトークで始まり・・・。全然本編と連動しない好き勝手なおしゃべりが続きます。まぁゴ作品の権利を持つ大手映画会社(途中からは東宝と言ってましたが)に怪獣の粘土模型を持ち込んで大丈夫かどうか見てもらったとかまぁその手の話なら作品に関係があるのでまだ良いんですが全く関係のない話が長く、一度は映像無視したおしゃべりコーナーになっちゃてるんだな、という覚悟で見ていたんですが、怪獣が姿を現すあたりでやっと映像関連を解説しながらのトークになって一安心。コロナウィルスの影響もあってスタジオが自由に使えず、怪獣シーンの大半はモデルを取り込んで加工したCGになっていますが、もともとは巨大ミニチュアメインに使って撮影するつもりだったせいもあってそこらへんに関する話が多くて良好。足を上げているのは鳥が死ぬとき足を上げているイメージがあるからで、今回の怪獣は恐竜ベースで恐竜は鳥の子孫だから鳥っぽい死に方をするだろう・・・ということだそうです。ただ、単純にポスターにしたときにオブジェっぽくなるからとも語っていたのでそちらがメインだと思いますが。ちなみにポーズのイメージはカトちゃんこと加藤茶氏の往年のギャグ、「ちょっとだけよ」だそうです。やはり本作がグダグダになった原因の一つはコロナウィルスによって思う存分撮影ができなかったから、というのはあるようですね。本来ならもっとCGではなく特撮技術を使って撮影を行いたかったようです。少なくとも参加した特撮スタッフは、もう二度とできないと思っていた昔の特撮技術や特攻技術を使って撮影ができる、とかなり意気込んで参加していたようですね。ただ、それだけに参加者が久々に仕事をするベテランが多かったんでしょう。怪獣造形の若狭新一氏だって怪獣は「ゴジラ FINAL WARS」依頼17年ぶりだったようですし、何よりこの人、1977年の「大鉄人17」とかに戦闘員役として出演してますから年齢もかなり・・・。また、本編特殊効果では、それこそ何十年ぶりくらいにコンクリート素材を混ぜた東映らしい爆発が行われ(よくわからない人はYouTubeの東映の公式チャンネルで「仮面ライダーV3」のオープニング部分とか見てください。爆発をバックにバイク走らせてるだけなんですが、それだけでオープニングを成立させているくらい爆発と混ぜたコンクリート素材がいい仕事してます)、それはいいんですが、そのために1975年の「秘密戦隊ゴレンジャー」の撮影経験のある人にやってもらった、などの話も聞けます。つまりベテラン、かなり年配の方が多く参加した現場だったようです。彼らは独自のこだわりもあったでしょうからそれをまとめるだけでも結構苦労があったでしょうね。特撮とVFXのバランスが予定通りに行っていればもうワンランク上のクオリティは出せたんじゃないかなぁと撮影時期が悪かったことを思わせてくれます。まぁ本編のグダりぶりはそれとは別だと思いますが。豪華版だけに特典ディスク(BDを買ったのに特典はDVD。まぁ使いやすくていいけど)が付いていて、当然特撮のメイキングを期待してみたのに、ほとんどが本編で残念。東宝だとほとんど特撮シーンのメイキングしか使わないのでそこらへんは制作会社の方向性の違いもあるんでしょうし、本編俳優のファンならあれでいいのでしょうが、"買う"って人が求めるものはまた違うので。そしてもう一つ、決定的に残念だったのは、どうやら酷評された原因を「真面目な作品だと思って見に来た人が多いから」としていたこと。おそらく制作側の公式見解としてそういうことにしよう、と決まっていたのだと思います。少なくともわたしは公開前からコメディだと思って見に行きましたし、分野を非難する気は全くありません。ギャグの方向がブレまくりだったことと、クライマックスとラストカットが許せなかっただけです。こういうすれ違いを意図的に定義しようとしている以上、東映や松竹の怪獣ものは当分無理だな・・・と感じてしまいます。だからこそ東宝の次回作には期待したところなんですが、またコロナウィルスが猛威を振るいだしたからなぁ。東宝としてはどうしても2024年に公開したいでしょうからなんとか頑張って仕上げてほしいと思う今日この頃です。