以前書いたケヴィン・コナー監督の冒険もの4連作のうち2作品は「地底王国」と「アトランティス7つの海底都市」。残りの2本である「恐竜の島」「続・恐竜の島」の2本のDVDがいつものRUNコーポレーションから発売された・・・のですが、どうももめてるらしいのです。というのも、「恐竜の島」に関してはニューラインというメーカーがBD化を進めており、RUNコーポレーション発売のDVDを「海賊版だ!」と非難しているんですね。ただ、ほぼTwitter内でしかその意見は拝見できないので一方的であり、細かいことが言えるほど詳しいことはわからないのですが。ニューラインはDVDは販売代理店としてBDは発売元としてその手の映画のソフト化を多数手掛けてきた十分な実績をもつメーカーですし、細かいことはちゃんとやっているところと思われます。その一方井でRUNコーポレーションのソースは毎回あやしくてトラブルを起こしたことも初めてではありません。わたしの記憶ですと「吸血の群れ」というタイトルがRUNコーポレーションからの販売がAmazonで予告されたものの途中で取り消され、別のメーカーからBD・DVD版が改めて特典付きで発売されたことがありました。また、輸入DVDではもっと高画質なマスターから作られていたのに、同じ映画のRUNコーポレーション版は明らかにVHSからのダビング動画をソースに使っていた、なんてことも何回かあります。今時公式WEBサイトすら持たない(検索しても無関係の会社しか出てこない)メーカーなんで、若干のあやしさは漂います。ソースも権利元と直接交渉しているのではなく、ソフトを販売していたところからなにかしら買ってきて日本語字幕付けて売っているだけなのかなぁという印象。それでも、同社が発売しなければ名前や存在は知っていても見ることも出来なかっただろうB級映画が多数存在するのは事実なのですが。今回の「恐竜の島」「続・恐竜の島」に関してはとくに販売停止とかはなく、そのままに売られていた(ニューラインは抗議した、とのことでしたが)ので背後の事情とか気にせず買ってしまったのですが、揉めている状況があるとなると書くことはちょっとためらわれます。さらに問題なのはニューラインが発売予定のBDは「恐竜の島」のみで「続・恐竜の島」に関しては予定がない(出したい、という意向はあるようですが、少なくとも現段階で言えることはない模様)ということ。わたしが主に書きたいのは「続・恐竜の島」の方なので「恐竜の島」に関しては軽く触れるだけにしておけばいいかなぁ、なんて考えたのですが、今回はやめておきます。古い映画に関しては気楽に自由に書きたいもので。
変わって取り上げるのがタイ映画の「ストレンジ・シスターズ」。今年の東京国際映画祭で上映された作品で、かなり早いDVD化になります。そういう意味ではわたしの趣向とは少し異なるのですが、本作はなんといってもあの「首だけ女」が登場しているので是非触れておこうかな、と。以前「首だけ女の恐怖」のことを書いたときに首から内臓をぶら下げて飛ぶ怪物に対し「首だけで十分でしょ? 内臓をぶら下げる必要がどこにあるんでしょうか」と疑問を呈したのですが、本作DVDに同梱されていた監督インタビューによると、あれは「ガスー」というあちら伝統のお化けだそうで、決して映画オリジナルの怪物ではないようです。それも国境を越えた広範囲にわたる怪物のようで、のインドネシアやタイだけではなく、カンボジアにも話はあるとか。登場する映画も、日本では「首だけ女の恐怖」しか知られていなかっただけで、他にもいくつか作られているようですね。「ストレンジ・シスターズ」はその「ガスー」映画の最新作になります。監督はタイ映画の中ではメジャーな「マッハ!」や「トム・ヤム・クン!」のブラッチャヤー・ビンゲーオ。ストーリーは映画の冒頭で多く語られるのですが、主人公の二人が「シスターズ」とはなっていても厳密には姉妹同然に育った従姉妹同士(劇中にはふざけて"マイシスター"と呼んだりするシーンもありますが)だということを理解してからでないとちょっとわかりづらいものです。まず主人公の母親同士が姉妹であること、"妹"の方がガスー一族の呪いによって"ガスー"に変身させられるようになってしまったこと、"姉"はガスー対策を研究し、呪術と漢方の力を使い、かつ暴力と食事の制限、それに性行為を禁止することでガスーへの変身を避けられるとして妹を管理したものの、妹は恋に落ちてガスーへと変身してしまう。もっとも無事に元に戻られたうえに男の愛情もゆらぐことはなかったため、どうやら結婚したらしく妊娠する。そこに妹を狙って彼女へガスー化の呪いをかけた一族が襲ってくる。姉は妹と、ガスー呪い遺伝の可能性を持つその娘の対策のために自分の研究記録を妹の配偶者、シンに託した後ガスー一族に闘いを挑んで命を落とす。やがて妹もガスーとなって暴れるがどうやらシンによって殺された模様。そしてガスー遺伝の子、モーラーをガスー化から救い、守るため、シンは姉の子、ウィーナーに呪術と戦闘術を仕込み、月日は流れ・・・。という感じです。シスターズの妹側を演じるのはAKB48の姉妹グループ、BNK48で「ミューニック」の名で活動しているらしい(知らないので)ナンナパット・ルートナームチュートサクン。つまりアイドルなわけですが、にも関わらず劇中では必要な描写とは言え、学校の授業で解剖したカエルを舐めて血を吸ったり(さすがに作りものだと思いますが)、デートに誘われた男に手を出されたり、もちろん最後にはガスーに変身したりと汚れ役を容赦なく要求されているあたり、日本で連想する"アイドル出演のホラー映画"とは一線を画す内容となってます。ガスーは時代が時代ゆえに造形物ではなくフルCG表現になっていてここは残念ではありますが出来は悪くなく、十分おぞましく感じます。ただ、よく考えてみたら当たり前ですが、ガスーというのは実はあまり強くありません。胴体を捨て、首と内臓だけになったガスーは理性を失うのか凶暴性が増し、ものすごいスピードで飛んで人を襲い、容赦なく殺しては行きます。が、むきだしの内臓なんて、そのどこでもちょっとでも攻撃が当たれば良くて悶絶行動不能、大抵は致命傷になってあっけなく死んじゃいます。それを守るためにある骨も肉もないのですから、ガスーは避けるしか防御方法がないのです。頭部だってそう。人体の首から上なんて弱点のかたまりです。だからこそ我々通常人は危険を感じると本能的に真っ先に手で頭を覆って守ろうとするのですが、ガスーは手がありませんからそれも出来ません。従って、その見た目のおぞましさとスピードに惑わされたりさえしなければ、シスターズの姉、ウィーナーのぎこちない戦いっぷりでも十分ガスーの集団に対抗できてしまうのです。本作におけるガスー化の恐ろしさは一族に凶暴化させられた心だけでなく、身も支配されることにあります。黒幕と思われるガスーの呪術師、実は最大の狙いはガスー化させた人間の肉体でした。呪術師の見た目は初老婆なのですが、これがガスー化されて捨てられた肉体に同化すると頭部の見た目まで若返ってしまうのです。おそらく若い女をガスー化して肉体を乗っ取りながら不老長寿を実現していたのでしょう。クライマックス、その呪術師が倒されたとみるや、それまでの実行部隊とは違って飛ぶこともできないような老いて力のないガスーたちがガスーの巣のようなところから何体も降りてきます。多分呪術師たちに体を奪われ、死ぬことも許されずに閉じ込められていたガスー化された人間たちの成れの果てだったのでしょう、我先にと内臓を手足代わりに這いずり回り、その肉体と自分こそ同化せんとガスー同士で争い始めます。本作で一番おぞましく、かつ夢に出そうな怪シーンでした。
ストレンジ・シスターズ [DVD]
プロイユコン・ロージャナカタンユーマクザム やっと涼しくなってきましたが、連休もわたしには関係なし。年内は定休日以外休みを取れる予定もなし。まだまだ窮屈な世の中ですが、だからこそ好きなことくらいパーッとやりたいものですね。
変わって取り上げるのがタイ映画の「ストレンジ・シスターズ」。今年の東京国際映画祭で上映された作品で、かなり早いDVD化になります。そういう意味ではわたしの趣向とは少し異なるのですが、本作はなんといってもあの「首だけ女」が登場しているので是非触れておこうかな、と。以前「首だけ女の恐怖」のことを書いたときに首から内臓をぶら下げて飛ぶ怪物に対し「首だけで十分でしょ? 内臓をぶら下げる必要がどこにあるんでしょうか」と疑問を呈したのですが、本作DVDに同梱されていた監督インタビューによると、あれは「ガスー」というあちら伝統のお化けだそうで、決して映画オリジナルの怪物ではないようです。それも国境を越えた広範囲にわたる怪物のようで、のインドネシアやタイだけではなく、カンボジアにも話はあるとか。登場する映画も、日本では「首だけ女の恐怖」しか知られていなかっただけで、他にもいくつか作られているようですね。「ストレンジ・シスターズ」はその「ガスー」映画の最新作になります。監督はタイ映画の中ではメジャーな「マッハ!」や「トム・ヤム・クン!」のブラッチャヤー・ビンゲーオ。ストーリーは映画の冒頭で多く語られるのですが、主人公の二人が「シスターズ」とはなっていても厳密には姉妹同然に育った従姉妹同士(劇中にはふざけて"マイシスター"と呼んだりするシーンもありますが)だということを理解してからでないとちょっとわかりづらいものです。まず主人公の母親同士が姉妹であること、"妹"の方がガスー一族の呪いによって"ガスー"に変身させられるようになってしまったこと、"姉"はガスー対策を研究し、呪術と漢方の力を使い、かつ暴力と食事の制限、それに性行為を禁止することでガスーへの変身を避けられるとして妹を管理したものの、妹は恋に落ちてガスーへと変身してしまう。もっとも無事に元に戻られたうえに男の愛情もゆらぐことはなかったため、どうやら結婚したらしく妊娠する。そこに妹を狙って彼女へガスー化の呪いをかけた一族が襲ってくる。姉は妹と、ガスー呪い遺伝の可能性を持つその娘の対策のために自分の研究記録を妹の配偶者、シンに託した後ガスー一族に闘いを挑んで命を落とす。やがて妹もガスーとなって暴れるがどうやらシンによって殺された模様。そしてガスー遺伝の子、モーラーをガスー化から救い、守るため、シンは姉の子、ウィーナーに呪術と戦闘術を仕込み、月日は流れ・・・。という感じです。シスターズの妹側を演じるのはAKB48の姉妹グループ、BNK48で「ミューニック」の名で活動しているらしい(知らないので)ナンナパット・ルートナームチュートサクン。つまりアイドルなわけですが、にも関わらず劇中では必要な描写とは言え、学校の授業で解剖したカエルを舐めて血を吸ったり(さすがに作りものだと思いますが)、デートに誘われた男に手を出されたり、もちろん最後にはガスーに変身したりと汚れ役を容赦なく要求されているあたり、日本で連想する"アイドル出演のホラー映画"とは一線を画す内容となってます。ガスーは時代が時代ゆえに造形物ではなくフルCG表現になっていてここは残念ではありますが出来は悪くなく、十分おぞましく感じます。ただ、よく考えてみたら当たり前ですが、ガスーというのは実はあまり強くありません。胴体を捨て、首と内臓だけになったガスーは理性を失うのか凶暴性が増し、ものすごいスピードで飛んで人を襲い、容赦なく殺しては行きます。が、むきだしの内臓なんて、そのどこでもちょっとでも攻撃が当たれば良くて悶絶行動不能、大抵は致命傷になってあっけなく死んじゃいます。それを守るためにある骨も肉もないのですから、ガスーは避けるしか防御方法がないのです。頭部だってそう。人体の首から上なんて弱点のかたまりです。だからこそ我々通常人は危険を感じると本能的に真っ先に手で頭を覆って守ろうとするのですが、ガスーは手がありませんからそれも出来ません。従って、その見た目のおぞましさとスピードに惑わされたりさえしなければ、シスターズの姉、ウィーナーのぎこちない戦いっぷりでも十分ガスーの集団に対抗できてしまうのです。本作におけるガスー化の恐ろしさは一族に凶暴化させられた心だけでなく、身も支配されることにあります。黒幕と思われるガスーの呪術師、実は最大の狙いはガスー化させた人間の肉体でした。呪術師の見た目は初老婆なのですが、これがガスー化されて捨てられた肉体に同化すると頭部の見た目まで若返ってしまうのです。おそらく若い女をガスー化して肉体を乗っ取りながら不老長寿を実現していたのでしょう。クライマックス、その呪術師が倒されたとみるや、それまでの実行部隊とは違って飛ぶこともできないような老いて力のないガスーたちがガスーの巣のようなところから何体も降りてきます。多分呪術師たちに体を奪われ、死ぬことも許されずに閉じ込められていたガスー化された人間たちの成れの果てだったのでしょう、我先にと内臓を手足代わりに這いずり回り、その肉体と自分こそ同化せんとガスー同士で争い始めます。本作で一番おぞましく、かつ夢に出そうな怪シーンでした。
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プロイユコン・ロージャナカタンユーマクザム やっと涼しくなってきましたが、連休もわたしには関係なし。年内は定休日以外休みを取れる予定もなし。まだまだ窮屈な世の中ですが、だからこそ好きなことくらいパーッとやりたいものですね。