Quantcast
Channel: 録画人間の末路 -
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1583

イギリス特撮の真骨頂、「地底王国」

$
0
0
積みDVDしていた「地底王国」ようやく視聴することができましたので、需要はゼロでしょうが解説レビューなんぞを書かせていただきます。

1976年のイギリス映画で、アミカスプロダクションの製作・ケヴィン・コナーの監督という組み合わせは前に書いた1978年「アトランティス7つの海底都市」と同じ組み合わせ。同社・同監督は他に1975年に「恐竜の島」1977年に「続・恐竜の島」と、この4年間に4本の特撮冒険映画を集中的に作っているのです。そのうち「アトランティス~」だけがオリジナルストーリーの作品であるのに対し、残りの3本はいずれもイギリスの作家エドガー・ライス・バローズの小説を原作としています。そのため、映画中に登場するキーワード「ペルシダー」に関する説明があまりなく、地底世界の名前ということをあらかじめ理解していないとピンとこないかも知れません。これは原作がペルシダー・シリーズとして展開したもので、説明不要なキーワードであるからです。バローズというと代表作は「火星のプリンセス」に始まる火星シリーズやターザン・シリーズの方とされており、特に日本においてペルシダー・シリーズが知られていたか不明ですが、おなじみのテレビ特撮番組「ウルトラマン」にペルシダー、「ウルトラマンタロウ」にペルミダーII世という地底探検車が登場しているところからすると、それなりの知名度はあったかと思います。
ご存知の通り、ターザンは最初の映画が作られてからすでに100年以上経過しているにも関わらず、未だにその名を冠する映画や映像作品が多数作られている映画史に轟くビッグネームになっていますが、ペルシダーや火星ものは原作者は同じなのになぜか映画化された作品は少なく、ペルシダーシリーズもこの「地底王国」一作しか作られていません。SF作品ゆえに昔の技術では作るのが難しかったということがあるでしょうか。原作にはペルシダー世界にターザンがやってくる話もあり、シリーズ化されてこれらが映像化されてもよかったか、とも思うのですが。もっとも映画用に単純なヒーロー化されたターザンのイメージしか持っていない我々がSFとターザンの組み合わせを見てもB級臭しか感じ取れないと思いますが。
本作はケヴィン・コナー特撮4部作(勝手に命名)の中でも一番登場する怪獣が多く、しかも大半が日本の怪獣映画のようなスーツ方式の中に人が入って演技するタイプであり、かなり親しみが持てます。が、残念ながらその造形はあまり魅力がありません。中に入る演技者の動きやすさを重視して設計したのか中の人の動きがそのまま出てしまっていて、頭部がかなり大きめにデザインされていることもあって正直被り物をしている人間にしか見えません。ペルシダー世界の支配者である翼竜人メーハー続も動きが硬く、「大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス」のギャオスを思い出しました。ギャオスの方は「首の骨が二本あるために首がほとんど動かない。その二本の首の骨を音叉のように共鳴させることで口から超音波メスを発射できる」という能力ゆえの硬さという設定だったので納得できるものでしたがメーハーの方は・・・という感じです。怪獣造形が「アトランティス~」のレベルだったらなぁ、と思わずにいられません。
その代わりにミニチュア特撮は素晴らしい出来です。特に冒頭の本作を代表するメカ、アイアンモールこと鉄モグラの質感と巨大感は特筆ものです。おそらく実際かなり大きなミニチュアを使っていると思いますが、作りの細かさや塗りは文句なし。動き出すシーンも重量感タップリでわくわくします。さすがテレビ「サンダーバード」でそのレベルの高さを見せつけたイギリスの特撮だけのことはあります。まぁ鉄モグラのデザインもその「サンダーバード」のジェットモグラに似ているのはちょっと気になりますが、これは仕方ないか。鉄モグラはジェットモグラと比べるとボディがかなり長いため、先端の円錐状のドリル(本作の表記はあくまでカッター)のせいで見た目シャープペンシルに似ています。この長さゆえに曲がることができず、空洞化していた地球の真ん中まで突っ切ってしまうというのがこのペルシダーシリーズの始まりですので、その設定にぞんぶんに答えたデザインと言えます。
そのミニチュア特撮の良さを生かすシーンが少ないのは残念ですが、洋物クラシック怪獣特撮ファンとしては十分満足のいくものです。洋物では珍しい架空の怪獣同士のバトルもありますし、その結果もなかなか壮絶です。ただ、怪獣描写に関しては造形も含めて製作者のイメージ通りにいかなかった、というところではないでしょうか。「アトランティス~」にはおそらくこの時の反省が生かされており、魅力の増した怪獣造形とミニチュアワーク、それと本編の絡みの水準がグンと上がっています。しかし、残念ながらケヴィン・コナー監督の怪獣特撮ものはそれで終わってしまいました。単にバローズの作品を映画化したかっただけであり、怪獣ものがやりたかったわけではなかったのかも知れません。となると「アトランティス~」はペルシダーシリーズの別作品をやるつもりで企画されたものが変更されたのかな? わからないですけどね。
地底王国 HDマスター版 blu-ray&DVD BOXエドガー・ライス・バローズ,ミルトン・サボツキー,ジョン・ダーク映像文化社


Viewing all articles
Browse latest Browse all 1583

Trending Articles