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Channel: 録画人間の末路 -
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今の日本では難しい? リメイク 映画「ボルテスV レガシー」見てきた

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※深刻なネタバレがあります。可能ならば映画館で鑑賞したのち、感じた思いを共有する目的で読んでください。
「日本のアニメや怪獣ものなどのサブカルチャー作品は世界を席巻している」と考えている人は多いはずだ。が、本当に「世界の人々の心に残った」作品は、テレビがモノクロからカラーに移行する時期、もっぱら1970年代あたりに作られた作品群ではなかったか、と考えている。その考えが最初に頭に浮かんだのは、以前中東の(王族か何かだったような)人が日本の円谷プロに「アイゼンボーグを作ってほしい」と直談判にやってきた件からだ。「恐竜大戦争アイゼンボーグ」はアニメと特撮の両方を使って作られた作品だが、それゆえに独自の輝きを持っている。そこらへんがウケタだけなのか、とも思っていたのだが、そのあとの海外の方々の日本作品への影響をみるかぎり、その影響力は「アイゼンボーグ」一作だけのものではなかったらしい。直接キャラクターが登場するわけではないが「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」という映画がイタリアで作られている。おそらく、それまで主に放送されていたアメリカ製の映像がジョークを交えたトボけた雰囲気のアニメやドラマばかりだったのに対し、日本の作品はひたすらシリアスで暴力的シーンを出すことをためらわない内容だったからだろう。その焼き付いた思いは時を得てもなお消えないのか、海外から「お金出すから昔の作品をよみがえらせてくれ」という申し出でがあったらしく、今日本では次々と古い作品のリメイクやリブートが作られている。が、それらを見ると、「今の日本では「昔みたいな作品」は難しいのかなぁ」と思うことしばしば。どうしても製作側が作家性を出してイジりたがるし、現代の日本のアニメマニアを想定して作るから昔のやり方がしづらいし、余計なビジネスが入ってきたりするのを連想してしまうような展開をしたりする。それゆえにサブキャラを活躍させ過ぎて主人公のキャラが薄くなったり、原作マンガそのままの演出を優先して昔の作品と同じ演出をやる絶好のチャンスを中途半端なものにしてしまったり、一部地域の地上波と配信だけの限定放送にして地方の人間には低画質配信視聴のみでまともな画質の視聴や保存がしたければ後で高額な円盤を買えと要求するなどという前世紀の遺物のようなビジネス手法がよみがえったりするのである!!!!! 特に3つ目は許せん。せめてBSで放送してくれ、某作品!

だからこそ、こちらにはちょっと期待するものがあった。余計な要素が入ってしまう日本で作るより海外の、本当に好きな人が作った方が昔の作品のリメイクにふさわしい作品になるのではないか、と思ったからだ。それが今回のターゲット、映画「ボルテスV レガシー」だ。フィリピンでは「超電磁マシーン ボルテスV」が熱狂的に迎えられ、その内容ゆえに一度政治的判断で放送を禁止されたほどだったがその弾圧ゆえにかえって熱は高まり、主題歌を"第二の国家"と呼ぶ人さえいるとかなんとか。その愛ゆえにアニメではなく、CGは使っているがドラマは俳優が演義する実写ドラマとして新作リメイクが作られるという話は聞いていたが、それが日本で映画として公開されるに至ったわけだ。ただ、本作はあくまで映画ではなくテレビ放送用、それも全90話! という長丁場を前提として作られているので圧倒的な製作費をかけて作られた映像美、までは期待してはいけない。あと個人的に「超電磁マシーン ボルテスV」にはそこまで思い入れがない。再放送かなにかでで一通り視聴したはずなんだけど、強く覚えてはいない。この時期の東映のロボットものだと、途中までは「超電磁マシーン ボルテスV」と同じ監督がやっていた「未来ロボ ダルタニアス」が一番面白かったと思っている。ロボットの合体も五機より三機の方が美しいと思ってるし。だから見に行くのがちょっと遅くなった。先週は夜に用事も多かったし、万全の体制で鑑賞できる日がなかったのもある。ただ、レイトショー公開が昨夜が最後で、これ以降は昼間の上映しかなくなるということなのであわてて見に行った。時間がたっていることもあって観客は全部で5人と少な目。もっともわたしは客がわたし一人とか、二人しかいないとかの鑑賞も経験しているので全く問題なし。
しかし思った。今回は観客が少なくて良かった、と。だってずるいよ、あの作り方。どうしても一緒に歌っちゃうもの、思い入れは強くなくても心が覚えてるんだからさ、合体シーン。CG化やそれに伴うデザインの変更はあったけど、演出は本当に昔まんまでBGMに日本語の主題歌が最小限度のアレンジで流れるって、あの毎話繰り返された演出の再現に自分が昔に戻らないわけがない。もちろん大声ではなかったけど、混んでいたら恥かいていただろうくらいに勝手に口ずさむ程度には歌うしかなかった。そして合体後にちょっと舐めるようなカメラワークでパイロットの姿を映してから、「ボォォルテェェス、ファァァァイブッ!」の掛け声が自然にマッチする決めポーズ。なるべく変えたくない、そのまま"リメイク"したかった、という製作陣の思いが最大限に分かる名シーンだ。この映像を大スクリーンで体感する、これだけで映画館まで行き、お金を払う価値は十分にある。レイトショーの割引だったし・・・。ただ、どうしても作家性が少し出てしまったせいか合体シーンがやや長く、主題歌に継ぎ足しがあり、無理やり合わせた感は否めない。さすがに主題歌や挿入歌と映像の演出を完璧に合わせる技術は70年代の日本のアニメ業界の空気でなければ難しい神業なのだ。
鑑賞する前はYouTUBEなどでも公開されている前日譚などを取り入れ、前半はドラマパート長めで初バトルをクライマックスに持ってくる、というような再編集が行われるものとばかり思っていたが、番組の序盤2~3話分を最小限の編集でそのまま使っているような感じで、日常パートは非常に少なく最初から最後まで常時戦闘状態という感じ。それゆえにBGMの一本調子が気になったし、途中若干ダレた。ただ、それでも二回目のバトルに打った必殺技は良かったと思う。巨大ロボットの必殺技の名を雄々しく叫ぶ。これも日本人じゃなければ難しい"わざ"と思っている。日本では偉大な先人がこの技術を作り上げ、それを体感しているから。アニメは子供向けのため、他国では当然吹き替えで放送されるから日本人声優の"わざ"を直接聞く機会がない。ゆえにどこか抜けたような平たい叫びになってしまうのが通例だった。実際本作も初戦はそんな感じだった。でも、クライマックスに悲しみを込めた必殺技の叫びは、その考えを過去のものにできるほどの思いを感じさせる力がこもっていたように思う。これは次からの演技の進化が楽しみだ・・・。と言っても多分この続きを現地の俳優さんの声で視聴する機会はないと思うけど。日本で放送や配信されたとしてもダイジェストで吹き替えだろうなぁ。レイトショーだから原語字幕版で鑑賞したけど、吹き替えだと「天空剣」のあとの「Vの字斬り」まで叫ぶんだろうか。こっちはCSとかに回ってくるまで待とう。
テレビ用を劇場で流したゆえに動きはカクカク、多分フレーム数を落としてある。特に横や縦に単純スクロールするシーンではそれが明白で、ちょっともったいない。放送の暁には本来のフレーム数に戻していただきたいと思う。

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